すべてはあの花のために④


「……シント。わたしのこと、好きになってくれてありがとう」

「? いきなり何?」

「ちゃんと言っておかないとと思って。シントに報告をね」

「ん? 一体どうしたの」


 ぎゅーっとシントに抱きついて、顔を彼の胸に付ける。


「……わたし、決めつけないことにしたんだ」

「えっ」

「運命だって、考え方だって。きっと変えられる。……そう、信じることにしたの」

「それ、って……」

「だから……シント。告白してくれて、ありがとう。きちんと返事をしようと思うんだ。今のわたしができる、今のわたしの返事を聞いて欲しい」


 真っ直ぐ、シントの顔を見つめて伝える。


「……こんなわたしを、残り時間が少ないわたしを、好きになってくれてありがとう」


 こんな変人で変態なのに、一緒にアニメ見てくれたり、ゲームもしてくれてありがとう。

 シントに出会えてよかった。出会ったのがシントでよかった。

 わたしを見つけてくれて、話してくれて、好きになってくれて、本当にありがとう!



「あおい……」

「それでも、今のわたしは、シントと幸せにはなれない」

「あおい、それは……っ!」

「今のだよ? 今のわたしは、誰にも答えてあげられないもん。だから……もし、もしもね? ちゃんと自分が幸せになれて、相手も幸せにさせてあげられるようになったら、もう一度考えるから」


 わたしは強くなるよシント。
 幸せになれるって思っておかないと、幸せにはなれないからね。


「だから、今はまだごめんなさい。これは、わたしの全てが変わらない限り、誰にでもおなじことだ。シントだからじゃないよ?」

「うん。ちゃんと、わかってるよ」

「そっか。よかった。……ちゃんと、言えた」

「……葵」


「ん?」と返事をしようと思った時には、再びシントの腕の中に収まっていた。


「今思ったこと、言ってもいい?」

「……うん。どうぞ?」


 シントが少しだけ腕を緩めたので、葵はその体勢のままシントを見上げた。


「この数時間さ、イチャイチャって言うよりグダグダしてると思うんだ俺は」

「え?」

「だって考えてもみなよ。帰ってきてからほとんど抱き締めてるだけだし。しかも、メイドになって? モエモエやって? それで寝るとか……ヘタレか!」

「……そ、そうですね?」


 嫌な予感がするぞと思ったら、一気にシントの下に組み敷かれた。


「ということで。今から攻めます」

「ええ?! 寝るよ?!」

「寝させるわけないでしょ」

「――!」