「……シント。わたしのこと、好きになってくれてありがとう」
「? いきなり何?」
「ちゃんと言っておかないとと思って。シントに報告をね」
「ん? 一体どうしたの」
ぎゅーっとシントに抱きついて、顔を彼の胸に付ける。
「……わたし、決めつけないことにしたんだ」
「えっ」
「運命だって、考え方だって。きっと変えられる。……そう、信じることにしたの」
「それ、って……」
「だから……シント。告白してくれて、ありがとう。きちんと返事をしようと思うんだ。今のわたしができる、今のわたしの返事を聞いて欲しい」
真っ直ぐ、シントの顔を見つめて伝える。
「……こんなわたしを、残り時間が少ないわたしを、好きになってくれてありがとう」
こんな変人で変態なのに、一緒にアニメ見てくれたり、ゲームもしてくれてありがとう。
シントに出会えてよかった。出会ったのがシントでよかった。
わたしを見つけてくれて、話してくれて、好きになってくれて、本当にありがとう!
「あおい……」
「それでも、今のわたしは、シントと幸せにはなれない」
「あおい、それは……っ!」
「今のだよ? 今のわたしは、誰にも答えてあげられないもん。だから……もし、もしもね? ちゃんと自分が幸せになれて、相手も幸せにさせてあげられるようになったら、もう一度考えるから」
わたしは強くなるよシント。
幸せになれるって思っておかないと、幸せにはなれないからね。
「だから、今はまだごめんなさい。これは、わたしの全てが変わらない限り、誰にでもおなじことだ。シントだからじゃないよ?」
「うん。ちゃんと、わかってるよ」
「そっか。よかった。……ちゃんと、言えた」
「……葵」
「ん?」と返事をしようと思った時には、再びシントの腕の中に収まっていた。
「今思ったこと、言ってもいい?」
「……うん。どうぞ?」
シントが少しだけ腕を緩めたので、葵はその体勢のままシントを見上げた。
「この数時間さ、イチャイチャって言うよりグダグダしてると思うんだ俺は」
「え?」
「だって考えてもみなよ。帰ってきてからほとんど抱き締めてるだけだし。しかも、メイドになって? モエモエやって? それで寝るとか……ヘタレか!」
「……そ、そうですね?」
嫌な予感がするぞと思ったら、一気にシントの下に組み敷かれた。
「ということで。今から攻めます」
「ええ?! 寝るよ?!」
「寝させるわけないでしょ」
「――!」



