すべてはあの花のために④


 そのあと、やっぱり途中でうとうとしそうになったけれど、何とか作業は終了。時計を見ると、時刻は15時になっていた。


「(……みんな、あの後学校に行ったのかな)」

「葵? おやつ持ってきたけどいる?」

「あ。うん。シントも食べよー」


 流石に個装のものには仕込めないからね。ただの馬鹿と思うなかれ。フフフ。
 でもきっと、飲んでたお茶に入れていたのだろう。結局のところお馬鹿な葵は、本格的に眠くなってきた。

 只今17時。殆ど作業は終えていたし、シントにもお礼しなくちゃいけなかったので「しんと~……」と、呼んで手を広げ、ベッドへ連れて行ってもらうことに。


「眠たくなってきた~……」

「はいはい。それじゃあベッドに行きましょうかね」


 シントは軽々と葵を抱えてベッドへ。
 葵をベッドに下ろしたら、何故かシントは無言になってしまった。


「ど、どうしたのシント」

「……ああああ~! すっごい罪悪感!」


 そして最終的に飛びついて来られ、もちろん葵は「ぐへっ!」と下敷きに。


「な、何があったんだい……」

「どうせ葵も気づいてるんでしょう? ご主人のこと信じないとか、俺は最低執事だ……っ」


 きっと、眠り薬のことを言っているのだろう。


「わたしのことを思ってしてくれたことでしょう? だからシントは最高執事さんだ!」


 葵はシントに抱きついて、胸のところでスリスリ。


「ちょっ?! へ、……変な気起こすからやめて」

「わかった。シントがそう言うなら」


 そう言って離れようとしたけれど「や、やっぱりだめ!」と、シントは再び葵を自分の腕の中に閉じ込める。


「ふふ。素直じゃないね?」

「ほんと、何もしないって決めてるのに……」


 彼の鼓動は、とくとくと少し早い。


「シントさんや。あなたは何を緊張しているんだい」

「そりゃ好きな子抱いてて、手出さない方がおかしいでしょ。それと戦ってるんだよ」

「いや、なんか返しがおかしい……」

「だって葵好きなんだもんっ。こんなこと夢みたいで、どうにかなっちゃいそうなんだけど」

「うん。今日限りだけどね」

「うん。なんか落ち着いた。アリガト」


 彼の目は死んでいた。
 いいような、悪いような。