すべてはあの花のために④


「それじゃあ、いっきまあ~す」


 そうしてシントは、ほんとに「モエモエ~」と言いながら、オムライスに何重ものハートを描いてくれた。愛が重すぎて、正直卵は見えなくなった。


「はいっ。ご主人さま。め し あ が れ ! きゃっ!」


 何を、間違ってしまったのだろうか。

 ハートをあんなに書いたことか?
 それともオムライスにしたことか?
 そもそも彼をここに置いたことか?


「(絶対アキラくんが知ったら幻滅するって)」


 まあそれはそれで面白いよね~と思いながら、ふわとろのオムライスをスプーンで掬って食べようとしたのだが、如何せんお手々は両膝にぐるぐるなまま。


「は~いご主人さま。あ~ん?」


 困っていると、何故か未だにノリノリのシントが、そこまでお世話をしてくる始末。


「し、シント? あなた、ラブ注入したら着替えるんじゃなかったの?」

「ご主人さまにきちんと食べてもらってからにしようと思いましてっ」


 わかった。原因はあれだ。
 全然帰ってこなくて、寂しすぎて暴走してるんだ。

 イコールそうしてしまったのは自分かと、諦めてシントの言うとおりにした葵は、パクッと一口。


「んまっ!」

「やった! きゃはっ!」


 いつまでやるのかなと思っていたら、結局のところ葵が完食するまでその恰好&そのキャラでいらっしゃいました。


「ねえねえ今度さ! みんながうちに遊びに来ることがあったら、その恰好でいつバレるかやってみようよ!」

「そんなの俺が頑張ってもお前がニヤニヤして終いには俺の名前言ってお前のせいでバレるに決まってるから嫌だ」


 思いっきり嫌がられたし!
 ここまでノリノリだと楽しいのかと思うじゃんねえ?


「……ちゃんと、全部食べたね」

「え? うん! 美味しかった! 流石はシント! ありがとね!」


 シントは満足そうに笑ってぽんぽんと頭を撫でたあと、メイド服を着替え始めた。


「えーまだ動画撮ってない」

「撮らせないから」


 そしてシントは、とてもセクシーに片足ずつ上げながらタイツを脱いで、さっさとメイド服から執事服に着替えてしまったのであった。残念。