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昼食リクエスト
オムライス
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「(……うん。いや、書いたけどね? どうしてこうなったかを聞いたんだけど)」
白い目で見ると、シントは何故か嬉しそうに、ひらひらとスカートを揺らして。
「それで~、♡♡♡♡=モエモエということかと思いまして~。勝手に解釈したあと、あ! もしかしてこれって愛情のこと? それならラブ注入してあげないと! と、ケチャップ持って待ってたんですう~」
いやいや、勝手に解釈しすぎでしょ。
まさかそこまで飛躍できる頭を持っていたとは。
影響を受けたのでしょう。誰のか? ご主人以外にいたら逆にびっくりですよ。
「アリガトーシント。トッテモウレシイヨ」
「いいから早く座ってくれる? ラブ注入し終わったら着替えるんだから」
どうやら着ること自体には、一応抵抗あったみたい。よかったよかった。
「似合ってるから驚きだよ。これからずっとそれだったら、きっと作者にももっと出してもらえると思うよ? 読者さんにも決して忘れられないと思う」
「嫌だし。一刻も脱ぎたいんですけど。タイツがピタってくっついて気持ち悪いし、さっきから足がすーすーして落ち着かないの」
取り敢えず葵は、準備されたとっても美味しそうなオムライスとサラダとスープの前に座った。
「今回はあ、すっごい上手に出来たんですう~」
ノリノリのシントは、チキンライスの上にちょこんと乗っている卵を、つんっと触る。すると、半熟の卵がバッと広がって、黄色いお山が完成。
「え。すっご」
「ご主人さま? なんてお書きしましょうか?」
ケチャップを持って今か今かと待ち構えてるシントに、「ちょっと待ってて!」と葵はスマホを慌てて取りに行く。
「……まさか、俺を写真撮るとか言わないよね」
「え? 違う違う! このすごいオムライスにメイドのシントが『モエモエ~』って言いながらケチャップで文字を書くところを動画に収めようだなんて、そんなこと思ってないよ!」
「おんなじじゃん!!」
「写真じゃないもん動画だもんっ!!」
シントと葵の、低レベルな言い合いが始まる。
口はシントの方が強いので、葵がすんなり負けた。
「(くっそう。一人で楽しむ分にはいいじゃんかよおー)」
葵は両膝に手をぐるぐると結び付けられて、シントがケチャップをかけるのをじっと見るだけになってしまった。



