バババババーッと体を拭き、頭をタオルでターバンのように巻いたあと、ボディークリームをこれでもかというほどたっぷり塗って、まだ少しだけ目立つ赤い花をコーンシーラーでしっかり隠してから、葵は自室へと戻っていった。
「お帰りなさいませご主人さま! きゃっ!」
「――?!」
すると、何故かメイドさんがポーズを決めて待っていらっしゃいました。
「ご主人さま? 湯加減はいかがでございましたか?」
「え? とっても気持ちよかったですけど……ちょっと入浴剤は入れすぎかなと思いましたが」
一体この目の前にいる美少女は誰だ?
この、どこかで見たことがあるような金色の瞳をしたメイドさんは――。
「あーだよね。俺も入れ過ぎちゃったとは思ったんだけどー」
「ええええ?! シントなの!? あなたは一体何をやってるの?!」
執事服を脱いでまさかのメイド服!
とても可愛らしくてイイと思います! 眼福ありがとう!
「でも……何だろ。この負けた感じは」
「何言ってるの。葵が一番美人で可愛いに決まってるでしょ」
その顔と恰好で言われても、嬉しくも何ともありませんけどね?
誰が見てもその言葉は、今のあなたにこそ相応しいですから!
「シントがオカマと化した」
「やめて。ツバサくんとキャラ被るから」
それもそうだと即納得。
「ねえ。わたしは今、もしかして夢でも見ているのかな?」
「いいえ? 違いますわご主人さまっ」
にしても、彼はどうしてこうもやる気満々なのだろう。
「ご主人さまのために、愛情込めてリクエストのランチをご用意したんですう~」
そう言う彼は、ぺらぺらと葵の前で紙を揺らしていた。



