すべてはあの花のために④


「わたしもう少しかかるから、先にお風呂入ってくれば?」

「え。お風呂でかち合うとか、俺きっと出血多量で死ぬよ」

「大丈夫だよ。わたしも、正直何回も鼻血出そうになったけど、この作品ではまだ出してないから」

「いやそういう問題じゃないし。千風くんは出してるしね」

「え? いつの話?」

「お前は知らなくていい話」


 葵は首を傾げているが、最早そういうことではない。
「一応俺仕事してる身だから、風呂はお前が寝付いてからにするわ」と言っても、まだ9時にもなってはいないのだが。


「えー。絶対今のうちに入ってた方がいいのにー」

「は? なんで?」

「だってわたし、ベッド入ったらシントのこと出すつもりないもん。それにシント、きっと体が怠くなってると思うし」


 ニコッと笑う葵に、再びシントの妄想くんが大冒険!


「(え。え!? どういうこと!? それってさ、やっぱりそういうことなんじゃないの?! 何! 恋人じゃないとそんなことしないとか言っておいて、本当にそうだったら、拷問でもお礼でも何でもなくってご褒美なんですけど!? それも特大の!!)」


 わけがわからないまま、取り敢えず葵から距離を取って考え直す。


「(……ッ。俺は今日、童貞を脱出できるのかもしれない……)」


 そしてお馬鹿な結論に着地してしまったシントは、体育座りをして小さくなった。


「(俺、絶対暴走するよ? 大丈夫? 絵面的に)」

「シント? お風呂行かないの?」


 心配そうな葵に、悩んだのは一瞬。


「……じゃあ、(俺を静めに)ちょっとだけ行ってくるから、ここから出ないでねっ」


 恥ずかしさで目を潤ませながら、シントは葵と目を合わせないまま、逃げるように部屋を後にした。