「わたしもう少しかかるから、先にお風呂入ってくれば?」
「え。お風呂でかち合うとか、俺きっと出血多量で死ぬよ」
「大丈夫だよ。わたしも、正直何回も鼻血出そうになったけど、この作品ではまだ出してないから」
「いやそういう問題じゃないし。千風くんは出してるしね」
「え? いつの話?」
「お前は知らなくていい話」
葵は首を傾げているが、最早そういうことではない。
「一応俺仕事してる身だから、風呂はお前が寝付いてからにするわ」と言っても、まだ9時にもなってはいないのだが。
「えー。絶対今のうちに入ってた方がいいのにー」
「は? なんで?」
「だってわたし、ベッド入ったらシントのこと出すつもりないもん。それにシント、きっと体が怠くなってると思うし」
ニコッと笑う葵に、再びシントの妄想くんが大冒険!
「(え。え!? どういうこと!? それってさ、やっぱりそういうことなんじゃないの?! 何! 恋人じゃないとそんなことしないとか言っておいて、本当にそうだったら、拷問でもお礼でも何でもなくってご褒美なんですけど!? それも特大の!!)」
わけがわからないまま、取り敢えず葵から距離を取って考え直す。
「(……ッ。俺は今日、童貞を脱出できるのかもしれない……)」
そしてお馬鹿な結論に着地してしまったシントは、体育座りをして小さくなった。
「(俺、絶対暴走するよ? 大丈夫? 絵面的に)」
「シント? お風呂行かないの?」
心配そうな葵に、悩んだのは一瞬。
「……じゃあ、(俺を静めに)ちょっとだけ行ってくるから、ここから出ないでねっ」
恥ずかしさで目を潤ませながら、シントは葵と目を合わせないまま、逃げるように部屋を後にした。



