「お~い葵? 何か問題があった?」
葵は目を見開いたまま首を緩く振る。なんだか怖かった。妖怪みたいだ。
「どういう意味」
「え。そのまま。俺の心情だけど?」
さっきまで固まっていたのが嘘のように、葵はまた作業に取り掛かる。
「ありがとう! すっごく助かっちゃった! 人からもらったものだから、綺麗に取っておきたかったんだよー」
そう言う彼女は少し寂しそうだったけれど、したことが間違いでないならいいかと思うことに。
「じゃあ一つお願いする!」
いきなり何を言い出したのかと思ったけれど、嬉しそうな表情に「何なりとどうぞ?」とつい言いたくなった。
「あの白い薔薇も、プリザーブドフラワーにして欲しい!」
葵の表情は、出来たそれを早く見たいという期待でいっぱいだった。
「……でも、ちょっと傷んでるよ? それに、普通そういうのって咲ききってない花使うんじゃない? あの花結構咲いちゃってるし、違う花買ってした方が綺麗に出来ると思」
「ダメ! あの花じゃないとダメなの!」
服を掴んで必死に訴えかけてくる彼女の瞳は、僅かに悲しみで揺れていた。
「(……一体何だっていうの。まさか、どっかのキザな野郎からもらったんじゃないだろうな)」
はあと、わざとらしくため息を落とす。
「そんなに綺麗に出来ないかもしれないよ? それでもいい?」
「うんっ! それ、最優先だから! それが終わらないと他のことやっちゃダメー」
「はいはい。そんなに期待してくれてるなら、仕事なんかそっちのけでやらせてもらいますよ~」
「うん! ありがとー!」
シントは僅かに顔を顰めた。いつもならここで、「仕事しろ」と返ってくるからだ。
「でも葵、これって何日もかかるよ? それでも優先するの?」
「うん! これの出来上がりが早く見たいから!」
「きっとシントのことだから、すっごく上手にするんだろうね~」なんて言われたら、気合いはマックス。
「葵がビックリするぐらいの、そのままの見た目で作ってあげましょうとも」
「うん! やった! シント大好きっ」
そう言って腰元に抱き付くもんだから、流石にすぐ離してもらった。



