「シント? どうしたの?」
いきなり叫び声を上げたものだから、案の定葵が心配して声を掛けてくれた。
「あー……あのさ、用事しながらでも話せる?」
「え? うん。大丈夫だけど……しながらだと時間かかっちゃうかもだよ?」
「いいからっ! それでいいからっ! あとお風呂は一人で入ってきてお願いっ!」
首を傾げながら、「シントがそう言うなら……」と、葵は話ながら用事をし始めた。
そしてすぐ、ふふっと可愛く笑みをこぼす。
「何想像したの~? 顔真っ赤だよー」
「……?! ……っ、あ。葵が悪いっ」
「えー? わたしはそこまでするつもりなんかないのにー」
「え? ないの?」
「え。恋人でもないのにそんなことするわけないじゃん」
「今回はシントにお礼しようと思ったんだよー」とバッサリ切られ、一気に落ち着いた。いや冷めた。
「それ俺の場合、ただの拷問になるんだけど」
「シントが変なことを考えてしまったからであって、わたしのせいでは断じてない」
え? そういうもんなの?
「(普通の男の子って、そんな想像したりしないの? 本能的に)」
何せ初恋が葵なものだから、その辺の一般常識には疎いシントさん。
いい具合に丸め込まれそうになっていることを気付いたかどうかはさておき。
まあいっかと、シントは葵の近くに寄る。
「フッ。わたしに近づくと火傷するぜい?」
「さっきしなかったから大丈夫」
葵はしゅんとなって、また用事をし始める。
「あ。そういえば、薔薇生けてくれてありがとね!」
一輪挿しに生けてある白薔薇を指差して、葵は嬉しそうに微笑んでいた。
「シントシント! あれってさ、プリザーブドフラワーとかに出来たりするのかな?」
「え。まあ出来るんじゃない? ハイビスカスもそうなんでしょ?」
すると何故か葵はピシリと固まってしまった。
「え? あっちの引き出しに俺入れておいたけど」
そういえば言うの忘れてたかと、小物棚の引き出しを開け、透明なケースに入れている赤いハイビスカスを取り出して見せる。
「それからストールも、ちゃんとハンガーに掛けておいたから」
クローゼットを開けて、仕事はサボっていないアピール。
「どこから持って帰ったか知らないけど、ちゃんと取っておいたよ」
けれど葵は、やっぱり固まったままだった。



