しばらくすると落ち着いた葵は、ゆっくりとシントから起き上がった。
「……葵、だよね」
「(ずずっ)え? うんっ。ぞゔだよ゙?」
すると、何故かシントは若干距離を取ろうとする。
「え。どゔじだの゙っ?」
「ちょっと待って」
シントが取り出したのは鏡。そして構えながら「いいか葵。頑張って自分を保つんだ」――そう前置いて、ばっとこちらへと向けた。
「?!?! 怖い怖い怖いぃー……ッ‼︎」
自分の顔を見て、再び震え出す事態に。
「ねえ葵。俺が好きな葵は、そんな顔じゃなかったはずなんだけど」
「わ゙だじも゙びっ゙くり゙だっ……」
「まず目はどこに行ったの。溶けてなくなった?」
「こ、ここに一応あったはずなんだっ……」
葵は、腫れすぎて垂れた目蓋を持ち上げる。
「あ。ほんとだ。よかった、あったね」
「うん。よ゙がっ゙だ」
「しかも葵、鼻の下擦ったでしょ。それもいっぱい。腫れすぎて唇三枚あるみたいで、口裂け女とかよりも怖いんだけど」
「ほんどだっ。しがも、声がじゃがれ゙でる゙よ゙お゙~……」
あまりの酷さに両手で顔を覆って俯いていると、どこから取り出したのかシントは濡れタオルを渡してくれる。
「え。どごがらどりだじだの?」
「そんなの四次元ポケットに決まってるじゃん」
「ほんどにっ?! わたじも゙ほじい゙‼︎」
「こうなるって予想ついてただけだから。早くそれで顔冷やしてお願い。そんな顔に俺はちゅーしたくないよ」
「いや。させないけどね」
「なんでそこは普通に喋れるの……」
項垂れたシントに、思わず笑みが溢れた。
葵の笑顔に、ほっと安心したようにシントは息を吐く。
「……大丈夫?」
「うん大丈夫。……ありがとねシント。本当に。ありがとう」
「はいはい。わかったから。それは帰ってベッドの中で言って」
「わかった」
「どうせ俺の給料減らそうとか言うんでしょ? あーいやだいやだ」
「お風呂も一緒に入る?」
「それでどうせ解雇にもってくるんでしょう? そんな流れも大体わかってるんだから。いつまでも騙されると思ったら大間違い」
「……じゃあ、帰って一緒にお風呂入ろうよ。それから、今日は一緒に寝よう? 口じゃなかったら、えっと。ちゅーもいいよ……?」



