「どうしてっ。気持ち悪いもの見るような目でわたしを見るの……ッ!」
「――!? 俺はそんな顔してな――」
「してる! 何かあったんでしょ今! ……っ。なんで。アキラくんが来たのっ!?」
すると葵は、まるで何かに取り憑かれたかのように「アキラくんじゃなかったら。アキラくんじゃなかったら……」と、頭を抱えながら何度も呟きを落としていた。
「おい、何があったんだよ」
「アキー? もしかしてアオイちゃん襲ったのー?」
「ていうか遅すぎよ」
「あおいチャーン! 朝だよお~!」
「♪~♪」
「アキくんどれだけ時間かかってんの」
「あっちゃ~ん朝だぞ~い?」
「お嬢ちゃん7時回ったぞー。そろそろ起きろー」
みんなが部屋の中へと入ってくる。そして状況を見た途端固った。
葵は目に涙を溜め勢いよく立ち上がったあと、自分の荷物を引ったくってみんなを横切り、玄関へと駆けた。みんなは部屋から出ていく葵を呼び止めようとしたが、一番扉の近くにいたヒエンがそれを止めたので、追いかけることはできなかった。
いや、追いかけたところで、何と声をかけていいかわからなかった。異常なほど何かに怯えるように、涙を流していた彼女に。
「……ッ。葵……っ」
何が起こったのか。ただ一人だけ知っているアキラも、困惑したまま動けなかった。



