「ごめんなさい」
二人で、やわらかく笑い合った。
「さっきも言ったけど、すっごく嬉しかったんだ」
「うん。それはよかった」
「カナデくんのことは好き。大好きなんだよ? いっつも技掛けてあげてるじゃん」
「ははっ。うん。そうだね? 愛情の裏返しみたいなものだねー」
「うん。違うけどね」
「え。違うの?」
「まあそれは置いといてですよ」
「置かないで欲しいんですけど……」
項垂れるカナデを、下から見上げながら伝える。
「こんな中途半端な今のわたしが、逆にカナデくんの告白を受け入れることの方が、とっても失礼だと思ったんだ」
「俺はそれでも嬉しいよ。アオイちゃんのそばにいれるなら」
「そう言ってくれて嬉しい。でも、わたしが嫌なんだ。許せないんだ。……わたしね、隣に立ってくれる人は、わたしの一番の理解者であって欲しいんだ。好きとかももちろんあるけど、それ以上に、この人がいないと生きていけないような……そんな人のそばに、わたしがいたいんだ」
「……今のアオイちゃんの中では、俺は一番じゃない?」
「今はみんなが一番」
「…………」
「だから、カナデくんはもちろん一番!」
「……ははっ」
「で、でもそれは、友達としてで」
「アオイちゃんっ」
まだ話し中の葵のおでこに唇が触れる。
「大丈夫。もう十分伝わってる」
カナデがふっと離れ、彼にもたれかかっていた葵は急に支えがなくなってしまい倒れそうに。
そんな葵を危なげなく抱き留めたカナデは、そのまま抱え上げた。
「それなら俺が、アオイちゃんにじっくりと、まずは好きを教えてあげましょうかねー」
「ええ?!」
「何しようかな……あ。アカネくんとはデートしたよね、俺付きだったけど。まずは俺ともデートしようか」
「か、カナデくん?」
「あとは何する? 手繋いだり、ぎゅってしたり、お姫様だっこは今してるから、大体はしてんだよね……。やっぱりここは、体が火照っちゃうようなこととか、蕩けちゃうようなキスとかを」
「カナデくんのランクは一気に圏外です」
「ははっ。冗談冗談~」と言っている顔は引き攣っていた。



