すべてはあの花のために④


「あれ? もういいの?」

「(こくり!)」


 そして、葵を後ろからぎゅーっと抱き締め、顎を肩に乗せた。


「(な、なんだ!? オウリくんは後ろがお好きですな?)」


 そう思いつつ、通話中になっている彼に声をかける。すると電話の向こう側にいるシントは、何故か唸っていた。


「え。どうしたの」

『だって桜李くん。最後思いっ切り鳴らすんだもん。めっちゃ耳キーン』


 オウリも聞こえたのか、申し訳なさそうな顔で葵を覗いた。


「オウリくん『ごめん』ってー」

『いや、俺がそうしろって言ったからいいんだけど……』


 小さく咳払いをしたシントが仕切り直す。


『迎え、何時に行けばいい?』

「え!? 切るの?!」

『桜李くんが付いててくれるって』

「ううぅ~……」

『何。嫌なの?』

「……シント」

『うん?』

「襲わないでいられる保証はないよ」

『頼むからやめて』


 何故か抱き付いているオウリも、うんうんと頷いていた。