『……もしもし、桜李くん?』
「…………?」
『……そう。君はまだ話せないんだね』
「――!」
『だったら反応だけ返して欲しい。……そうだな、“はい”なら一回。“いいえ”なら二回。スマホを指でコンって鳴らしてくれる?』
オウリは、スマホを持っている指先で、コンと一つ突いた。
『ありがとう。……きっと君のことだから、何となくおかしいのは気づいてるかな』
「…………(コン)」
『でも君は、まだ話せないんだね』
「…………(コンコンコン)」
『え? 三つ? ……そっか。話したい意志はあるんだね』
「(コン!)」
『いや、耳痛い』
「(ココンココン……)」
『(ん? 何これ)……ごめんなさい?』
「(コン!)」
『そ、そう(当たってよかった)』
シントは大きく息を吐き、空気を変える。
『君がもし知りたいと思うなら、話せるようになってから聞きにおいで。でも……そうだね。君は従兄弟だから、先に理事長に聞いてごらん。きっと彼が少しだけ話すと思うから』
「…………(コン)」
『今後俺への連絡はアキを通すこと。……今は、それぐらいしか言ってあげられなくてごめんね。一刻も早く、君が話せるようになることを願ってるよ』
「(ココココン)」
『(ありがとう、かな?)いいえ。どう致しまして』
「(コン!)」
『(当たったし! 地味にすごくない?!)それじゃあよろしくね。葵は今夜、俺とずっと電話してるから、君は先に寝てて』
「?」
『あいつ、今日はもう寝ないんだ。だからそっとしておいてあげて欲しい』
「(コンコン!)」
『……じゃあ、君が付いてあげていてくれる?』
「(コン!)」
『ありがとう。よろしくね。……最後に少しだけ、葵に替わってくれる?』
オウリは最後に――コンッ! と強く鳴らして葵へスマホを返しに行く。



