すべてはあの花のために④


『……もしもし、桜李くん?』

「…………?」

『……そう。君はまだ(、、)話せないんだね』

「――!」

『だったら反応だけ返して欲しい。……そうだな、“はい”なら一回。“いいえ”なら二回。スマホを指でコンって鳴らしてくれる?』


 オウリは、スマホを持っている指先で、コンと一つ突いた。


『ありがとう。……きっと君のことだから、何となくおかしいのは気づいてるかな』

「…………(コン)」

『でも君は、まだ話せないんだね』

「…………(コンコンコン)」

『え? 三つ? ……そっか。話したい意志はあるんだね』

「(コン!)」

『いや、耳痛い』

「(ココンココン……)」

『(ん? 何これ)……ごめんなさい?』

「(コン!)」

『そ、そう(当たってよかった)』


 シントは大きく息を吐き、空気を変える。


『君がもし知りたいと思うなら、話せるようになってから聞きにおいで。でも……そうだね。君は従兄弟だから、先に理事長に聞いてごらん。きっと彼が少しだけ話すと思うから』

「…………(コン)」

『今後俺への連絡はアキを通すこと。……今は、それぐらいしか言ってあげられなくてごめんね。一刻も早く、君が話せるようになることを願ってるよ』

「(ココココン)」

『(ありがとう、かな?)いいえ。どう致しまして』

「(コン!)」

『(当たったし! 地味にすごくない?!)それじゃあよろしくね。葵は今夜、俺とずっと電話してるから、君は先に寝てて』

「?」

『あいつ、今日はもう寝ないんだ。だからそっとしておいてあげて欲しい』

「(コンコン!)」

『……じゃあ、君が付いてあげていてくれる?』

「(コン!)」

『ありがとう。よろしくね。……最後に少しだけ、葵に替わってくれる?』


 オウリは最後に――コンッ! と強く鳴らして葵へスマホを返しに行く。