「……さて、と……」
暗闇を背に、部屋の中で眠るみんなに頬を緩めながら、電話をかける。
『……遅い』
「ごめんごめん」
相手はもちろんシント。
ちゃんと電話にしたから許してと、一言謝罪を入れておく。
『今何時だと思ってんの』
「え? ……3時?」
『夜中のね。連絡遅すぎでしょ』
「ごめんごめん」
声に覇気がなかったのに気づいたのか、電話の向こうにいるシントの様子が変わる。
『……何かあった?』
「ううん。みんなはすごいなあと思っただけ」
大きなため息が、思わず落ちた。
『俺は、葵もすごいと思うよ』
「……そっか。ありがと」
原因は、他でもない。
「シント。三日、だよ?」
『…………』
「三日、……何にもすることできてない」
『だから寝られないの』
心配そうな声に、乾いた笑いしか出てこない。
本当は、不安で不安で仕方がないというのに。
「……ほんと。どうしよう……」
『ちょっとでもすればいいのに』
「それは多分、逆に駄目だと思う」
『そうなの?』
「わかんないけど、それが“赤”との契約だから」
『そう……』
それを最後に、しばらくの間耳が痛いほどの沈黙が流れる。それに耐えられなくなったのは、シントの方が早かった。
『ねえ、ほんと何があったの』
「……さっき、友達のお手紙を読んだの」
『……そうなんだ』
でも、葵ももう、耐えられなかった。



