「おーい大丈夫か? さっきすごい音が……あ」
ベッドから落ちた時の音が聞こえたのであろう、扉を開けたのはヒエンだったのだが。
「……ご、ごゆっくり~」
すぐにバタンと扉が閉まって、なんだか拍子抜け。
いつもいろいろと邪魔されるのにと思っていると、彼も同じようなことを思っていたのだろう。二人でひとしきり笑い合った。
「オウリくん。あのね? こんなのしか、持ってないんだけど……」
オウリの手を取った葵は、自分の心へ、その手をそっと当てる。
「わたしのでよかったら――」
「おーい、何があっ――」
その時、タイミング悪く、ガチャリと再び扉が開く。
「もらってくれますか?」
「はああ!?」
「あらま~!」
部屋の中の状況に、みんなは大慌て。
「お、おいっ! どういうことだよ!」
「葵いい~……」
「アオイちゃーん。せめて返事をおお~……」
「あおいチャンはおれのだからっ!」
「アンタ! これは一体どういうことなの?!」
「……ん。よく撮れてる。オウリがあいつを訴えた時、少しでも証拠残しとかないと」
「いや日向よ、あんたはそれでいいんかい」
ただ勇気と強さをあげる話をしているだけなのに、何をそんなに騒いでいるのかと首を傾げていると、目の前の彼がクスッと笑って文字を打つ。
〈あーちゃんの心も体も
くれるのかと思っちゃった♡〉
「ええっ!?」
そうしてオウリは、葵を引き寄せてキスを落とした。
みんなは、きっと口にしたと思っていると思う。すごく近かったけど。
葵の口の端にちゅっと音を立てて離れていった彼は、とても満足そうに笑っていた。
……それからは、本当に大変だった。
オウリは勢いよく葵から離れ、チカゼとアキラとカナデに追いかけられ、放心状態の葵はアカネとツバサに肩を掴まれて大きく揺らされ、食べた手巻きを戻しそうに。
そんな賑やかな様子を、扉からキサとヒエン、それからその様子を逐一逃すまいと動画に収めるヒナタは、楽しそうに笑っていた。



