読み終わったものの、オウリが後ろからガッチリしがみついていて、葵は全く動けなくなっていた。
「(そっか。あの動画はみんなが持ってるんだね……)」
今まで曖昧にしてきた事実を突きつけられちょっぴり涙を流していた。けれど、一向に抱きついている力は弱まらなくて。
恥ずかしかったんなら書かなきゃよかったのにとも思ったけれど、今は、素直に彼の本当の気持ちを聞けて本当に嬉しかった。
「オウリくんは、ヒエンさんの気持ちとかって知ってるのかな?」
取り敢えず、話を逸らしてみることに。
すると、お腹に回ってる腕にぎゅっと力が入ったので、これはクロだと思った。
「ヒエンさんね、オウリくんのお母さんのこと、一目惚れだったらしいよ?」
「――!」
オウリはビックリしていた。きっと、一目惚れだとは知らなかったのだろう。
「隙有りっ」
「……?!」
力を緩めた一瞬の隙を突き、くるりと振り返った葵は、オウリに正面から飛び付く。予想以上に勢いが強かったのか――どーんっ! と大きな音を立てて、二人はベッドから一緒に落ちた。
「~~……っ」
「お、オウリくんすまん!」
落ちそうになった瞬間オウリが身を挺して庇って下敷きになってくれたおかげで、原因の葵にはほとんどその衝撃はなかった。起き上がりながら慌てて謝ろうとしたけれど、オウリが葵の腰に腕を回していたままだったので、思った以上に体は起き上がらない。
見下ろすオウリの顔は、やっぱり恥ずかしかったのか赤くなっていたけれど、肩の力が抜けたような、ほっとしたような表情で。
その表情のままオウリのあたたかい手が、葵の髪を耳に掛けながら頬に触れた。
「……オウリくん。君の心の中を教えてくれて、ありがとう」
葵もオウリと同じように、そっと彼の頬に手を添える。
「君は、わたしなんか。より……もうっ。ずっと。強いよ……。おうりくんもだけど。ほんとうにすごいよねっ。みんな。ちゃんとっ、自分の過去と。向き合って……」
オウリの顔へ、透明な雫が落ちた。
「(あーちゃん!?)」
慌てて起き上がったオウリは、葵の頬を両手で包み込む。
葵の涙は止まらなかった。ただぽろぽろと、涙だけが零れて落ちていく。
オウリは何度も指で拭った。
「……おうりくんの心は。ずっと。冷たかった。ね……」
涙を流しながら、葵はオウリの胸にそっと手を当てる。
「ビックリ。した。ね……。寂しか。たね。……っ。悲し、かったよね。……でも。ヒエンさんに。みんなにっ。出会えて。……笑えるように、なって。よか。たっ」
オウリが、口を尖らせながら拗ねた顔で視線を合わせてくる。その顔に葵は泣きながら笑った。
「わたしとっ。であってくれて。あり。がとっ」
すると、目の前のオウリが、驚いたように目を見張った。
頬を染めて、少しだけ悔しそうに顔を歪めて、でも嬉しそうに笑って。
「ーーーゃーっ」
えっ? と思った時にはもう、彼の顔が目の前にあった。



