読んでいて、わかった。これは、彼が今まで書いていた日記なのだと。
葵のことを書いてくれていたところを、わざわざ抜き出してくれたのだろう。便箋と言うよりはノートの切れ端のようだ。ところどころに破った跡が残っている。
そうして、多分さっきの間で書いていたのが、最後の……彼からの手紙。
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あーちゃんへ
あーちゃん。今日はここまで来てくれて
本当にありがとう。
病院に泊まった時にね? 実はこっそり
お母さんの様子を見に行ってたんだ。
そうしたらね、おじさんもいたんだー。
多分、おれがその日も友達の家に
泊まるって言ったからかな?
おじさんも素直じゃないよねー。
まあまさかあんな早朝にお母さんにも
おじさんにも会うなんて思わなくって
正直驚いちゃった。
久し振りに
おれを見たお母さんが暴れ出して
やっぱりおれは、怖かったんだ。
それでも、おれは強くなるよ。
あーちゃんに溶かしてもらわなくても
おれは大丈夫。
自分の力で、おれは溶かしてみせる。
お母さんに、会いに行こうと思うんだ。
その時に、あーちゃんも一緒に来て?
おれがちゃんと、お母さんに
「ごめんね」と「ありがとう」を
おれの声で言えるところを
ちゃんと見てて欲しい。
聞いてて欲しいんだ。
そうしたら、おれがお母さんに
会いに来られたのはこの人のおかげ
そう、お母さんに教えてあげたくて。
あーちゃん。
ちょっとはおれ、強くなれたかな?
でも、あともうちょっとだけ
おれに勇気と強さを分けてください。
氷川 桜李
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