すべてはあの花のために④


 それからおじさんと暮らしました。
 初めは薬を飲んでいたりしてたけど、何とか体調も戻ってきました。

 そうしたらいきなりおじさんに担がれて、どこかへ連れて行かれました。

 そこは道場でした。正直めちゃくちゃ嫌でした。おじさんが何を言いたいのかもわかりました。
 でもおじさんの目がとっても怖くて、嫌だなんて言えなかったおれは、渋々最初は通っていました。


 でも、そこでおれはあかねに会いました。
 おれがそこへ行ったのは入園してすぐのことです。

 おれの状態が安定したので、おじさんが幼稚園に通わせてくれました。
 あかねは一個上だったけど、おれからしてみたらとっても大きく見えました。そしてとっても強かった。


 だから、強くなったら話せるようになるかもしれない。お母さんに『ごめんなさい』って言えるかもしれない。そう思いました。

 それからおれは強くなろうと決めて、一生懸命稽古しました。まあおじさんの目が怖かったのもあるけど。



 それから小学校は、桜ヶ丘へ通うことになりました。
 最初はなんでかなと思ったけど、あかねと一緒だったし、あとから知ったけど、おじさんとみーくんがそこへ入れてくれたんだと知りました。

 そこでは新しい友達ができました。

 あかねと同い年のあっくんと、かなちゃんと、つっくんと、きーちゃん。
 おれと同い年のちーちゃんとひーくん。二つ上のとーくん。
 それから、ちーちゃんときーちゃんととーくんの幼馴染みのきっくんとも、仲良くなりました。


 みんなは、話せないおれのことも、表情を変えないおれのことも、変な目で見てくることはありませんでした。そんなみんなに、おれの心はいつもちょっとだけ温かかった。

 でも話せなくてもどかしく思っていたら、きーちゃんがおれに筆談を教えてくれました。
 前から書いてはいたけど、それでも書いていたのは単語だけ。でもきーちゃんがおれに書いてくれた文字は、とっても温かかった。



〈みんなおうりのおともだちだよ!〉



 その文字を見て、おれの心が変わりました。
 彼女が持っていた鉛筆を借りて、今の気持ちをみんなに伝えたいと思いました。



〈ともだちになってくれてありがとう〉



 そう書いたら、みんなが本当に嬉しそうに笑ってくれました。
 それからおれも、みんなの前なら笑えるようになりました。