それからおじさんと暮らしました。
初めは薬を飲んでいたりしてたけど、何とか体調も戻ってきました。
そうしたらいきなりおじさんに担がれて、どこかへ連れて行かれました。
そこは道場でした。正直めちゃくちゃ嫌でした。おじさんが何を言いたいのかもわかりました。
でもおじさんの目がとっても怖くて、嫌だなんて言えなかったおれは、渋々最初は通っていました。
でも、そこでおれはあかねに会いました。
おれがそこへ行ったのは入園してすぐのことです。
おれの状態が安定したので、おじさんが幼稚園に通わせてくれました。
あかねは一個上だったけど、おれからしてみたらとっても大きく見えました。そしてとっても強かった。
だから、強くなったら話せるようになるかもしれない。お母さんに『ごめんなさい』って言えるかもしれない。そう思いました。
それからおれは強くなろうと決めて、一生懸命稽古しました。まあおじさんの目が怖かったのもあるけど。
それから小学校は、桜ヶ丘へ通うことになりました。
最初はなんでかなと思ったけど、あかねと一緒だったし、あとから知ったけど、おじさんとみーくんがそこへ入れてくれたんだと知りました。
そこでは新しい友達ができました。
あかねと同い年のあっくんと、かなちゃんと、つっくんと、きーちゃん。
おれと同い年のちーちゃんとひーくん。二つ上のとーくん。
それから、ちーちゃんときーちゃんととーくんの幼馴染みのきっくんとも、仲良くなりました。
みんなは、話せないおれのことも、表情を変えないおれのことも、変な目で見てくることはありませんでした。そんなみんなに、おれの心はいつもちょっとだけ温かかった。
でも話せなくてもどかしく思っていたら、きーちゃんがおれに筆談を教えてくれました。
前から書いてはいたけど、それでも書いていたのは単語だけ。でもきーちゃんがおれに書いてくれた文字は、とっても温かかった。
〈みんなおうりのおともだちだよ!〉
その文字を見て、おれの心が変わりました。
彼女が持っていた鉛筆を借りて、今の気持ちをみんなに伝えたいと思いました。
〈ともだちになってくれてありがとう〉
そう書いたら、みんなが本当に嬉しそうに笑ってくれました。
それからおれも、みんなの前なら笑えるようになりました。



