オウリが出て行くのを静かに見届けて、理事長は涙混じりの息を吐く。
「……やっと。やっと。ここまで来たよ」
金庫の中から、まずは小さめの木箱を取り出した。
「もう、これで君は寂しくないよ」
両手でそこから出してあげた花は――アネモネ。
「お前も、やっと声を取り戻せてよかった」
次に取り出したのは――……サクラソウ。
「……あの子にはやっぱりお見通しだったか。きっと、ぼくがこっちへ来るべきだったのは今だったんだろうな。あの子には叶わないよ」
今度は大きな木箱の小さな部屋へと、それを移してやる。自分に見立てた薔薇を撫でながら。
強くなってその箱から飛び出した、アネモネとサクラソウ。
蕾のまま枯れ、真っ黒な花を咲かせようとしている、何かもわからない花のまわりを――薔薇、菊、ツツジ、百合。そして蘭、ナデシコ、アネモネ、アサガオ、サクラソウ、牡丹がしっかりと支える。
ツンデレとウサギは、強くそしてやさしい心の持ち主。
残る部屋は、あと――……二つ。



