❀ ❀ ❀
帰り支度をしていると再び理事長室の扉がノックされる。返事をする前にガチャリとまた扉が開いた。
「みーくん。今大丈夫?」
「桜李? もちろんいいよ! そうだ! ぼくと一緒にマ○カを――」
「しない」
「そ、そう……」
はっきり断られていじけていると、そっとオウリが何かを手渡してくる。
「みーくん。さっきはちゃんと言えなかったんだけど。おれ、ちゃんと声出るようになったよ」
「……ああ。ほんとうに、よかった」
嬉しそうな彼に、嬉し涙が出そうになる。
「あーちゃんにね? お手伝いしてもらったんだ。おかげでお母さんともちゃんと話せた。ちゃんと謝れた」
「……どうして桜李が、謝る必要が」
「お母さんをね、怖いと思っちゃったから。会いたくないって、ちょっとでも思っちゃったから」
「詳しくはこれに書いてあるからっ!」と、少しだけ照れくさそうに指差す手紙へと、視線を落とす。
「みーくん。おれ、あーちゃんと友達になれて、本当によかった。みーくんに言われたとおり、生徒会に引き留められて、よかった」
「まあ絶対友達になりたいって思ってたから、みーくんがもし逆に『引き留めるな』って言ってても、おれは絶対にあーちゃんを生徒会に入れてたし、友達にもなってたと思うけどね!」と、オウリが笑う気配がする。
「みーくん。おれ、絶対にあーちゃんのこと助けるからね。きっとおれだけじゃない。みんな、絶対にあーちゃんのこと助けるから。知ってる? みんなが集まれば百人力なんだよ! ……だからみーくん。安心して待ってて? 絶対に助けるから。……みーくんが一番つらそうだよ」
「――!」
弾かれるように顔を上げる。そこには自信満々の、満面の笑みを浮かべているオウリが。
「みーくんも、あーちゃん心配なんだよね」
「……ああ。きっとこれ以上の心配事は、もう一生ないだろうね」
手紙を戻して、オウリに返す。
「つらかったな桜李。……何もしてやれなくて、悪かった」
「え。何言ってるのみーくん。おれのために、理事長になったんでしょ?」
「桜李……」
理事長という立場を早々に目指したのは、彼を助けてあげられるかも知れないと思ったからだ。だから最短で、ここを譲り受けた。
「うざい時もあったけど。ほぼうざかったけど」
そんなことを、今まで思っていても聞けなかった。表情ではなく言葉で。だから。
「ずっと、おれのこと見ててくれて。たくさん遊んでくれて。……ありがとう。みーくんっ」
……それだけで十分だ。
帰り支度をしていると再び理事長室の扉がノックされる。返事をする前にガチャリとまた扉が開いた。
「みーくん。今大丈夫?」
「桜李? もちろんいいよ! そうだ! ぼくと一緒にマ○カを――」
「しない」
「そ、そう……」
はっきり断られていじけていると、そっとオウリが何かを手渡してくる。
「みーくん。さっきはちゃんと言えなかったんだけど。おれ、ちゃんと声出るようになったよ」
「……ああ。ほんとうに、よかった」
嬉しそうな彼に、嬉し涙が出そうになる。
「あーちゃんにね? お手伝いしてもらったんだ。おかげでお母さんともちゃんと話せた。ちゃんと謝れた」
「……どうして桜李が、謝る必要が」
「お母さんをね、怖いと思っちゃったから。会いたくないって、ちょっとでも思っちゃったから」
「詳しくはこれに書いてあるからっ!」と、少しだけ照れくさそうに指差す手紙へと、視線を落とす。
「みーくん。おれ、あーちゃんと友達になれて、本当によかった。みーくんに言われたとおり、生徒会に引き留められて、よかった」
「まあ絶対友達になりたいって思ってたから、みーくんがもし逆に『引き留めるな』って言ってても、おれは絶対にあーちゃんを生徒会に入れてたし、友達にもなってたと思うけどね!」と、オウリが笑う気配がする。
「みーくん。おれ、絶対にあーちゃんのこと助けるからね。きっとおれだけじゃない。みんな、絶対にあーちゃんのこと助けるから。知ってる? みんなが集まれば百人力なんだよ! ……だからみーくん。安心して待ってて? 絶対に助けるから。……みーくんが一番つらそうだよ」
「――!」
弾かれるように顔を上げる。そこには自信満々の、満面の笑みを浮かべているオウリが。
「みーくんも、あーちゃん心配なんだよね」
「……ああ。きっとこれ以上の心配事は、もう一生ないだろうね」
手紙を戻して、オウリに返す。
「つらかったな桜李。……何もしてやれなくて、悪かった」
「え。何言ってるのみーくん。おれのために、理事長になったんでしょ?」
「桜李……」
理事長という立場を早々に目指したのは、彼を助けてあげられるかも知れないと思ったからだ。だから最短で、ここを譲り受けた。
「うざい時もあったけど。ほぼうざかったけど」
そんなことを、今まで思っていても聞けなかった。表情ではなく言葉で。だから。
「ずっと、おれのこと見ててくれて。たくさん遊んでくれて。……ありがとう。みーくんっ」
……それだけで十分だ。



