「……導くって、もしかして……」

「あれ? もしかしておうり、何か知ってる?」

「知ってるというか、ちょっとだけ話しただけ」

「そっか。……うん。もう一人、あおいチャンを知っている人がいるからね」

「アカネは、もしかして先にシントさんから話を聞いてたのか」

「その時、アキとツバサが一緒にいたってとこかなー?」

「先に言っておくけど、しんとサン容赦ないからね。理事長なんかやさしい方だよ」

「(な、なんかって……)」


 空気を読んで部屋から退出しようと思ったけれど、そんな会話が聞こえてきて思わず足が止まる。


「それでも、ギリギリのところまで聞くことをお勧めする。でもしんとサンと話せるのは一回だけだよ。おれらも連絡先すら教えてもらえなかった。心積もりができたら、あきクンを通してって」

「話をした時も思ったけど、なんであっくんはいいの。兄弟だから?」

「それはよくわからなくて。ただ『お前だから』としか、しんとサン言ってなかったんだ」

「(『お前だから』……ね。確かに、今はそうとしか言ってあげられないか)」


 シントの絶妙な言い回しに、苦笑をもらすことしかできなかった。


「一番つらいのはあおいチャンだ。でも、みんなはあおいチャンに踏み込もうって決めたんでしょ? だからみんな、これだけは先に言っておくよ」


 そして、勿体振るアカネに、みんなと同じようにゴクリと唾を飲み込む。


「しんとサン、本当にズバッて切り捨ててくるから! つばさクンなんかケチョンケチョンにされちゃったから! メンタル面だけは十分に鍛えてから、あきクンにお願いすることをおれは、お勧めするっ!」

「あ、あかねも相当キツかったみたいだね」

「うん! しんとサンとは正直もう話したくないって思ってるからね!」


 アカネの言葉に、三人の顔が引き攣っていたのを最後に、部屋を後にする。


「……気持ちはわかるけど、信人くん。それ、話せない以前の問題で、絶対私情が入ってるでしょう」


 三人と同じように、思わず顔を引き攣らせたのだった。