君たちが踏み込もうとしているものは、君たちよりも残酷な運命だということを。
 それでも君たちは、知りたいと思うかと。

 もし、知りたいと思うならば……彼女に踏み込む覚悟があるのならば、君たち自身が彼女に近づいて、知りなさい。たった独りで。その、残酷な運命を。



「(……凍り付いたように、固まってしまうのも無理ない話だ)」


 まさか、彼女のことを知ろうとしただけで、こんなことを言われるとは思ってもみなかっただろう。普通ならば、有り得ない話だ。
 けれどこれは、普通ではない話。普通に考えれば有り得ない話。

 だから、これで精一杯。
 これから君たちがどう動くかで、彼女の運命は変わるはずだ。


「(ぼくだって、できることならすぐにでも話してやりたい。彼女の助けになりたい。今すぐにでも、みんなの力を借りたいと思っているさ)」


 でも、それじゃあダメなんだ。
 それでは『彼女』に、足下をすくわれてしまうから。

 君たちでないと、彼女は変えられない。君たち一人一人が、彼女自身を知らなければ。


「(人伝では、どうしてもその人の解釈などが含まれてしまう。それでは、彼女を知ったことにはならない)」


 だから、ちゃんと彼女を知ってあげてくれ。
 それでも彼女のそばにいたいと思えるなら。……君たちは、彼女を助けることができる。


「(そこまで知れたなら、答え合わせでも何でもしてあげようじゃないか。それなら約束を破ることにはならない。『話すな』とは言われても、『聞くな』『答えるな』とは、言われていないからね)」


 もう、彼女には時間が残されていない。
 一刻も早く、みんなが彼女のそばについてくれることを、願っているよ。