「……理事長。オレら、聞きたいことがあっ――」

「それはぼくからは話せないことだ」


 最終的に「みーくん、きもちわるい」とオウリにバッサリ切り捨てられて、話を進めることができたのだが。当たりが強いのは決して、気持ち悪いと言われたことへの八つ当たりではない。

 空気をここまで研ぎ澄ませたのは初めてで、みんなは驚きのあまり体を硬直させていた。


「何を聞きたいのかはわかっているよ。……そうだね。みんなならもう、大丈夫だろう。今まで大変だったね」


 大変だった『何か』を、敢えて隠す。驚いたみんなには、ただ小さく笑うだけ。


「……さて。茜くんはもう、覚悟が決まったからここへ来たと、そう考えていいんだね」

「はい。理事長」


 初めは、少し緊張しているようだった。それもこれも、どこかの執事くんのせいだろう。しかし、そう尋ねた時にはもう、彼の瞳は真っ直ぐ理事長へ向けられていた。

 知っておきながら、ここへ来た。
 それ相当の気持ちを固めてきたのだろう。


 他の三人は、何のことかと首を傾げていたけれど。


「では、どうしてみんなで来てしまったのか。理由を聞いてもいいかな」

「ある程度までなら、一人じゃなくても理事長から話が聞けると判断したからです」

「……みんなを連れてきたのは君かな」

「みんながバラバラで行こうとしていたので、わざと一緒に連れてきました」

「うん。とてもいい判断だ。駄目かもしれないとわかっていても敢えて動いた君には、とても勇気があると思うよ」

「……いいえ。ここへ来たのなら、結局は同じことですから」


 悔しそうに顔を歪ませるアカネに、みんなは眉を寄せていた。


「でも、進もうとしたことは変わりない。折角だから君ももう一度聞いていきなさい。それからぼくの補足を、みんなに話してくれるかな」


 小さく俯きながら頷くアカネと、その様子を見守る三人に、理事長はゆっくりと口を開いた。