流産してしまったショックで、お母さんは笑えなくなってしまいました。話すことも、そのうちできなくなりました。
毎日毎日、家から出ることもなく、ただぼーっとしていました。
時々お父さんの写真を見ては、声も出さずに泣いてました。
ご飯も作れなくなったお母さんのために、一生懸命おれはご飯を作る練習をしました。
でもお母さんは、そのうち食べることも止めました。
おれがまだ小さかったので、ただ切っただけのものを出していたからだと思いました。
自分ができる精一杯のことをしましたが、次第に食べるものがなくなりました。
お母さんに何もしてあげられなくなったおれは、いつもお母さんにお話をしました。
でもおれが話せることなんて、昔の話くらいでした。それでも、楽しい思い出を話したらお母さんもきっと元気になってくれると、そう思っていました。
でもある日、お母さんに話しかけようとしたら、お母さんに殴られました。
その時、お母さんはこう言いました。
「もう話しかけないでっ!」
だからおれは、それから話すことをやめました。
なら、おれが笑顔だったら、お母さんも笑顔を返してくれるんじゃないか。そう思って、それからはただ話さずに、笑顔でいることにしました。
でもまたある日、今度はお母さんに蹴られました。
その時、お母さんはこう言いました。
「なんで笑えるの。笑わないで」
それからおれは、笑うこともやめました。



