「もおーみんな落ち着いてよー」
「誰のせいだと……」
そして、そんなことを言うオウリに、みんなはやっと冷静になったよう。言葉が出ないまま、みんなはそれぞれ喜びを顔に浮かべた。チカゼなんかは、今にも泣き出しそうだ。
そんな彼らにオウリは少し恥ずかしそうに、それでも今までで一番の笑顔を向けた。
「うんっ。おれ、声が出るようになりましたっ!」
今度はみんながオウリに抱きついてくる。それでもオウリが葵を放さなかったので、葵も道連れだ。
「というわけでみなさん! お騒がせしましたあー。みんなにも、おれがどうしてこうなっちゃったのか、ちゃんと話せるから聞いて欲しいんだー」
オウリは、葵に読ませてくれた手紙を持ってきていた。
「でも、流石にこれを読み上げるのはつらいので、みんなで読んでくれると嬉しいです」
本当に、どこまで強くなるのだろう。この手紙を、笑顔で渡せるなんて。
オウリの言葉に、初めは戸惑っていたみんなも、読み進めるにつれてだんだんと顔が険しくなっていく。そんな中、オウリは葵に尋ねた。
「あーちゃん。おれ、強くなれたかな」
「うん。これ以上ないほど、最強に強いよ」
「そっか。……みんな、ビックリするよね」
「ビックリはするだろうけど、ちゃんとオウリくんから聞けて嬉しいと思うよ」
「うん。……みんなと友達になれて、本当によかった」
小さく笑うオウリの横顔に可愛さはなく、そこにいたのは自分の弱さと向き合えた格好いい男の子だけ。
「……本当に、男の子なんだね」
「え。あーちゃん、おれのこと女だと思ってたの? それかほんとにウサギだと……」
「なんだか今のオウリくん、すごく格好よく見えたから」
「お、おれ。格好よかった……?」
「え? うん。オウリくんが格好いいことはよく知ってるよ?」
「あーだめだ。あーちゃん。ちゅーしたい」
「ええ?! ちょちょお……!?」
読み終えたみんながまた飛びかかってきて、しばしうるさくなってしまった生徒会室であった。
「オレもちゅーしたーい」
「やめなさいっ!」
便乗しようとしたキクは、相変わらずキサにペシンッと叩かれていたけれど。



