「(あーあ。あんなこと言うつもりはなかったのに。……でも、理事長にはお礼も取り敢えず言えたし。もしわたしが枯れちゃっても、……感謝の気持ちだけは、伝わるといいな)」


 生徒会室の扉を開けると、葵が一番最後だったようだ。キクよりも遅くなったことは、ここ最近で一番ショックだった。


「おーい漏れてるぞー。道明寺は、明日オレの教材運び手伝えー」

「わかりました。ついでにキク先生のことも運んであげますね。もちろんお姫様抱っこで」

「――よし。オウリ。何があったんだ。先生に相談してみろ。な?」


 慌てたキクに、みんなは呆れた様子でため息をついていた。
 そんな中、オウリに手招きされた葵は、彼の隣のソファーに腰掛けた。

 彼はいつも以上にニコニコしていて、『どうしようかな? どうしようかな~』なんて、楽しそうに体を揺らしている。


「(……なんだかんだで結構ドSだよね)」


 そして意を決したオウリは、よしっと立ち上がって、みんなに満面の笑顔を見せた。


「あーちゃんとちゅーしちゃいました!」


 てへっと笑う彼に、みんなは大絶叫。
 加えて、立ち上がった勢いのまま葵に抱き付いてきて、また容赦なくキスを迫ってくる始末。


「うぎゃあー……!」


 ちょっと待ってよ!
 彼が一番攻めてくるとか、聞いてないんだけど! 予想外なんだけどおーッ!


「お。じゃあオレも」

「や、やめなさいっ!」


 葵とオウリを引き剥がそうと、みんなが飛びかかってきている隙に、キクとキサはソファーで勝手にイチャイチャし始めるし。

 そして何とかキスは免れたものの、オウリは断固として葵からは離れず。取り敢えずそれ以上は何も起きそうになかったから、葵がみんなを落ち着かせた。


「みんな。今驚くのはそうじゃないでしょう」

「……ま、オレもしたけどな」

「チカくーんっ?!」


 再び爆弾投下により、結局しばらくの間はどうやっても収拾がつかなかった。