すべてはあの花のために④


「……あーちゃん。すきです」

「――!」

「あーちゃん。すき、なんです」

「おうりくん……」

「すき。あーちゃん。おれは、あーちゃんのことが、どうしようもないくらい。すきですっ」

「……っ」


 好きって気持ちは、こんなにもあたたかいのに。

 ……同時に、とても怖かった。恐ろしかった。


「……あーちゃんは。おれのこと。きらい?」

「きらいなわけ。……っ、ない」

「それじゃあ、すき?」

「……好きだけど。オウリくんと同じ好きじゃない」

「頑張れば、おれと同じすきになってくれるかな」

「……っ、わから。ない」


 きちんと答えてあげられないのがもどかしくて、ぎりっと奥歯を噛み締める。


「……あーちゃん、結婚するつもりないって聞いた」

「(……どうしてみんな知ってんだろうか)」

「だから、誰とも付き合う気がないんだよね」

「あっ。そ、れは……」

「……もしかして、『付き合えない』?」

「――!」


 驚いてオウリの顔を見る。彼はただ、やさしく微笑んでいた。


「あーちゃんが付き合えないのは、あーちゃんが冷たくなってしまうことと、関係がある?」

「……っ、それは……」

「それ、あるって言ってるようなものだよ?」

「あっ」


 戸惑う葵に、オウリはクスクスと笑うだけ。


「じゃあ、あーちゃんと付き合うためには、冷たくなるのをなんとかしないといけないのかな?」

「お、おうり、くん……」

「でもあーちゃん、話せないって言うからなあ。どうしたらいいんだろう……」

「……ご、ごめんな。さ……っ」

「えっ。あーちゃん、どうしたのっ?」


 苦しそうな声に、オウリは泣いているのかと思った。
 でも葵は、ただ必死に何かを堪えるように、顔を歪ませていて。


「……これは。『話せないこと』じゃないんだ。話せるのはきっと、わたしだけ(、、、、、)。だから……」

「……どういう、こと」

「……っ、ただわたし(、、、)が。『話したくない』だけ。なの……っ」

「……そっか。そうだったんだね、あーちゃん」


 オウリはそっと葵を引き寄せて、頭をぽんぽんと撫でてくれる。


「そんなにつらそうにするなら、聞くに聞けないじゃん。……一体何があったのあーちゃん」

「いや、結局聞こうとしてるじゃん」

「ははっ。今のは独り言。……無理に聞けないなら、あーちゃんが話せるようになるまで待とうかな。おれはいつまでも待つつもりだよ」

「……そ、か」


 葵は、そう返すので精一杯だった。