「おかあさんもごめんなさいっ。おーちゃんに、酷いこといっぱいしちゃったこと、ずっと謝りたかったのっ」
「それはおれもだから、いいことにしよ?」
「おーちゃんのこと、殴っちゃってごめんねっ」
「……ううん」
「蹴っちゃって、ごめんね」
「っ、ううん」
「話すな、なんてっ。笑うななんて。……言っちゃって、ごめんね」
「っ、……ううんっ。おれも。ごめんなさいっ」
カリンは、オウリの頬を両手で包んで、おでこをこつんと合わせる。
「また、たくさんお話ししましょう? おーちゃんのお話、たくさん聞きたいわ?」
「うん! おれも話せて嬉しい! たくさん、聞いて欲しいんだっ」
にっこり笑い合う二人に、ヒエンと葵は小さく笑った。
「それでねえおーちゃん。お母さん、ちょっと提案があるんだけど、いいでしょうか」
「あ。お母さん? おれからも提案があるんだけど、いいでしょうか?」
にっこり二人は笑って、一度葵の方を見た後、葵もにっこり笑ったので、そのままヒエンの方へ視線を流した。
「炎樹くんっ」
「おじさんっ」
「……へ。俺?」
ヒエンは、一体どうしたのかと思って固まっていたけれど。
「よかったら、わたしの旦那さんに」
「よかったら、おれのお父さんに」
「「なってくれませんか?」」
同じようにふわりと笑う彼らを見て、ヒエンは完璧に固まってしまった。
「(……ったく。しょうがないなあ)」
葵はヒエンに近づいて、彼の目の前で手を振ってみるが、完全に意識は宇宙の彼方へ。
「こりゃダメです」と言うと「やっちゃって」と二人からお許しを戴いたので、葵は思いっきり腕を振り上げた。
――バッチーンッ!
「――?! ってえなあっ?!」
ベランダの時よりも強く、思い切り叩いておきました。
(※あ。ちなみにビンタです。顔には葵の真っ赤な手形が)
「いった~い。ゴリラのせいで、手が折れてしまいそうですう~……」
「お嬢ちゃんが痛がるの?! 絶対今の俺の顔の方がすっげえことになってんぞ! 腫れてんの見なくてもわかるからっ!」
「あらあら。ゴリラじゃなくなってるわ炎樹くん」
「おじさんイケメンになったよ。オメデトウ」
「え。オウだよな……? お前、本当はそんなこと言うやつだったのかっ?」
なんだかおかしくなって笑ってしまった葵も、「ほらほら、ちゃんと言わないとゴリラさん」とだけは、何とか言えた。
ヒエンは、照れくさそうに頬をポリポリ掻いていた。二人はというとニコニコ……ニヤニヤして、彼の言葉を待っていた。
「……カリン。オウには、もう言ってるんだけど……」
「え? 何? よく聞こえないんだけど?」
「(カリンさんはなかなかのドS……っと)」
きっと、相手が彼だからだろう。
彼女の顔は、とっても嬉しそうだから。



