すべてはあの花のために④


「おかあさんもごめんなさいっ。おーちゃんに、酷いこといっぱいしちゃったこと、ずっと謝りたかったのっ」

「それはおれもだから、いいことにしよ?」

「おーちゃんのこと、殴っちゃってごめんねっ」

「……ううん」

「蹴っちゃって、ごめんね」

「っ、ううん」

「話すな、なんてっ。笑うななんて。……言っちゃって、ごめんね」

「っ、……ううんっ。おれも。ごめんなさいっ」


 カリンは、オウリの頬を両手で包んで、おでこをこつんと合わせる。


「また、たくさんお話ししましょう? おーちゃんのお話、たくさん聞きたいわ?」

「うん! おれも話せて嬉しい! たくさん、聞いて欲しいんだっ」


 にっこり笑い合う二人に、ヒエンと葵は小さく笑った。


「それでねえおーちゃん。お母さん、ちょっと提案があるんだけど、いいでしょうか」

「あ。お母さん? おれからも提案があるんだけど、いいでしょうか?」


 にっこり二人は笑って、一度葵の方を見た後、葵もにっこり笑ったので、そのままヒエンの方へ視線を流した。


「炎樹くんっ」
「おじさんっ」

「……へ。俺?」


 ヒエンは、一体どうしたのかと思って固まっていたけれど。


「よかったら、わたしの旦那さんに」
「よかったら、おれのお父さんに」

「「なってくれませんか?」」


 同じようにふわりと笑う彼らを見て、ヒエンは完璧に固まってしまった。


「(……ったく。しょうがないなあ)」


 葵はヒエンに近づいて、彼の目の前で手を振ってみるが、完全に意識は宇宙の彼方へ。
「こりゃダメです」と言うと「やっちゃって」と二人からお許しを戴いたので、葵は思いっきり腕を振り上げた。


 ――バッチーンッ!


「――?! ってえなあっ?!」


 ベランダの時よりも強く、思い切り叩いておきました。
(※あ。ちなみにビンタです。顔には葵の真っ赤な手形が)


「いった~い。ゴリラのせいで、手が折れてしまいそうですう~……」

「お嬢ちゃんが痛がるの?! 絶対今の俺の顔の方がすっげえことになってんぞ! 腫れてんの見なくてもわかるからっ!」

「あらあら。ゴリラじゃなくなってるわ炎樹くん」

「おじさんイケメンになったよ。オメデトウ」

「え。オウだよな……? お前、本当はそんなこと言うやつだったのかっ?」


 なんだかおかしくなって笑ってしまった葵も、「ほらほら、ちゃんと言わないとゴリラさん」とだけは、何とか言えた。

 ヒエンは、照れくさそうに頬をポリポリ掻いていた。二人はというとニコニコ……ニヤニヤして、彼の言葉を待っていた。


「……カリン。オウには、もう言ってるんだけど……」

「え? 何? よく聞こえないんだけど?」

「(カリンさんはなかなかのドS……っと)」


 きっと、相手が彼だからだろう。
 彼女の顔は、とっても嬉しそうだから。