そんな仲睦まじい二人の様子に、ヒエンはだらしなく涙と鼻水を流し、看護師と担当医もハンカチで目元を押さえつつ、「また後程来ますので」と言って席を外した。
「おかあさんっ。おれっ、……おれっ!」
「うん。なあに? ゆっくりでいいのよ」
オウリはカリンからゆっくりと離れ、ベッド横の椅子に座ったあと、自分の左腕に着いていたブレスレットを外して、母に着けてあげた。
「……おれ。おかあさんに。ずっと。あやまりたかったんだ」
「お母さんも。ずっと、おーちゃんに謝りたかったんだけど。今は違うことを、言って欲しいな」
「え? ……えっと。おかあさん。おれを生んでくれて『ありがとう』?」
「わーお! なんでそんなこと言うのー! それ一番最後に言うやつじゃないのっ?!」
「え? ええ?」
「もう! 本当にいい子なんだからっ!」
息子の頭を、心底幸せそうにわしゃわしゃと撫で回す母。
「わあ~っ。お、おかあさんっ、ちょ。まってよ……」
「おーちゃんがいい子過ぎて可愛すぎて、誰かに食べられちゃうんじゃないかってお母さんは心配だわっ!」
母がそう言った瞬間、オウリとヒエンがバッと葵を見てきたので、慌てて視線を外しておいた。
「……お母さん? たくさんたくさん『ありがとう』がいっぱいあるんだ。でも、これは今、言っておきたいんだ。聞いて、くれる?」
「うん。もちろんよ。おーちゃん」
オウリは姿勢を正し、真っ直ぐに母の目を見つめる。
「……おれ。あの時のお母さんのこと、怖いって。思っちゃったんだ」
カリンは、ただじっとオウリの言葉を聞いていた。
「ごめんなさい。おれはいい子じゃないんだ。お母さんのこと怖いって。思っちゃって。お母さんにその時は『会いたくない』って。……思っちゃった。それをすっごい後悔してて。ずっと、謝りたかったんだ。でも、声が出なくなった。怖くて、おれはずっと、怯えてた」
「おーちゃん……」
「でもおれ、いろんな友達に会ったんだ。いろんなこと、教えてもらった。本当に今まで楽しかったよ! たっくさん、お話ししたいこと、あるんだ! そのお友だちの一人に、おれも強くしてもらったんだよ」
オウリ越しにこちらを見つめるカリンの視線には、後ろに手を組んでにっこりと笑顔を返すだけ。
「だから、おれはやっと、ここまで来られたんだ。そのおともだちに付いてきてもらっちゃったけど……お母さん。ここに来るのが遅くなって『ごめんなさい』。会えて、話せて。……おれ、今すっごい嬉しいっ」
「……っ、おーちゃんっ」
ぎゅうっと、カリンはオウリを抱き締めていた。
そんな母に、彼も腕を回して嬉しそうに笑っていた。



