にっこり笑って尋ねると、彼女はゆっくりと葵へ視線を合わせた。潤んだ瞳が、真っ直ぐ懇願するように見つめてくる。
「……教えて欲しい。あおいさん。わたしもとっても弱いの。苦しいの。寂しいの。悲しいの。そのせいで、たくさんの人に迷惑を掛けているの。……こんな自分とは、早くさよならしたいのよ」
必死に彼女は言葉を紡いでくれた。
そんな彼女の様子を、ヒエンはどこか申し訳なさそうな顔で見守っていた。
「それではカリンさん。まずは、お話してもらってもいいですか?」
「……おは、なし… ……?」
「自分の、そういう暗い部分って、人にはなかなか話せないですよね」
「……うん。そうね。だって、話しても何も解決しないもの」
諦めた表情をするカリンに、葵はゆっくりと首を振る。
「言葉にすることで、あなた自身の心が、ほんの少しだけスッキリしたような、軽くなったような気持ちになりますよ」
「……かるく。なるかしら」
彼女から飛んでくるのは、疑うような眼差しだ。
「話をしたら、きっと思い出してしまうでしょう。強くなるということは、つらいことと向き合うこと。そう思えていれば、あなたがちゃんと強くなっている証拠です」
「あおいさんは、何か知っているのね」
彼女が、すっと目を細くして葵を見つめる。
「驚かせてすみません。あなたが愛おしくてしょうがない人に、聞いたんです」
「……そう。あの子が、話したのね」
彼女の纏う空気が変わる。
医者やヒエンが体勢を変えるが、葵は静かにそれを制した。
「カリンさん。彼はまだ話せません。あなたの言いつけ通り、彼はまだ、あれから一言も『話していない』んです」
「それって……」
カリンの頬にそっと手を添える。白くてとても滑らかだ。
「彼からは、文字で教えてもらいました。……カリンさん。彼も、とても強くなりました。だからあなたもどうか、最後まで諦めないで。あなたの心を聞かせてください。きっと心が軽くなります。……来年の桜は、こんな遠くからではなく、近くまで行って、彼と一緒に見てあげてくれませんか?」



