そう思っていると、「ちょっといいか」とチカゼに声を掛けられた。
「――スチャッ!」
「臨戦態勢解け。……そんな話しねえから」
チカゼは小さく葵に頭を下げた。
「アオイ、ありがとう」
「へ?」
何を今更。
それは今朝、散々聞いたよ。
「……どういたしまして」
「ん」
満足そうに笑った彼だったけれど、やっぱり少し照れくさかったみたい。そっぽを向いた時、彼がいつもつけている左耳の【翠緑のピアス】が、いつも以上にきらりと光って見えた。
葵の視線に気づいてか、チカゼは苦笑を浮かべながら教えてくれた。父親の形見なんだと。
「寂しくて、ずっと外せなかったんだけど」
彼は、葵の目の前で、ゆっくりとそれを外し始める。その仕草がすごく大人っぽく見えて、可愛かった彼の姿なんて、どこにもなくて。
「……別に、ずっと着けてなくてもいいかと思ったんだ」
彼は大事そうにそれを握る。
「オレはもう大丈夫だって。親父たちの写真のとこに飾っとく」
「……うん。きっと、お父様もお母様も。安心されると思う」
「そうだな」と、嬉しそうにチカゼは返してくれた。
「今度さ、家来いよ」
「え?」
彼はふわりと笑う。それはとっても大人っぽかったけれど、決してもう苦しそうではなかった。
「親父にも母ちゃんにも、お前のことちゃんと話したい。……お前にも、会って欲しい」
「……っ、うん。是非、会わせてくれるとうれしい」
彼と同じように、葵もふわりと笑って答えた。



