すべてはあの花のために④


 そう思っていると、「ちょっといいか」とチカゼに声を掛けられた。


「――スチャッ!」

「臨戦態勢解け。……そんな話しねえから」


 チカゼは小さく葵に頭を下げた。


「アオイ、ありがとう」

「へ?」


 何を今更。
 それは今朝、散々聞いたよ。


「……どういたしまして」

「ん」


 満足そうに笑った彼だったけれど、やっぱり少し照れくさかったみたい。そっぽを向いた時、彼がいつもつけている左耳の【翠緑のピアス】が、いつも以上にきらりと光って見えた。

 葵の視線に気づいてか、チカゼは苦笑を浮かべながら教えてくれた。父親の形見なんだと。


「寂しくて、ずっと外せなかったんだけど」


 彼は、葵の目の前で、ゆっくりとそれを外し始める。その仕草がすごく大人っぽく見えて、可愛かった彼の姿なんて、どこにもなくて。


「……別に、ずっと着けてなくてもいいかと思ったんだ」


 彼は大事そうにそれを握る。


「オレはもう大丈夫だって。親父たちの写真のとこに飾っとく」

「……うん。きっと、お父様もお母様も。安心されると思う」


「そうだな」と、嬉しそうにチカゼは返してくれた。


「今度さ、家来いよ」

「え?」


 彼はふわりと笑う。それはとっても大人っぽかったけれど、決してもう苦しそうではなかった。


「親父にも母ちゃんにも、お前のことちゃんと話したい。……お前にも、会って欲しい」

「……っ、うん。是非、会わせてくれるとうれしい」


 彼と同じように、葵もふわりと笑って答えた。