すべてはあの花のために④


「お~い。あっちゃん?」

「アオイちゃーん?」

「葵?」

「……ちょっとアンタ、どうしたのよ」

「あおいチャン、教科書一限のが開いたままになってる……」


 そのあと葵は、教室に戻って一日授業を受けていたのだが、受けていたというよりはぼうっとしていた。


「でもあっちゃん、授業で当てられた時は……」

「……ちゃんと答えてたよねー?」

「……ふむ。糖分不足か」

「いやアキ。その飴舐められるのアンタだけだから。しまいなさいさっさと」

「にしても、あおいチャン? もう放課後だよ?」


 ずっと窓の外を見ている葵に、みんなが首を傾げていると。


「失礼します。道明寺先輩はまだいらっしゃいますでしょうか」

「あ」


 みんなが何を言っても反応しなかった葵が、後輩らしき男子に反応を示す。


「よかったまだいらして。……今、少しだけ大丈夫でしょうか」

「あ。……はい。今行きます」


 ゆっくりと立ち上がった葵は、廊下に立っている男子に吸い寄せられるかのように歩いて行く。


「すみません。お忙しいところお呼びしてしまって」

「いえいえ。まだ生徒会の時間は大丈夫なので、お気になさらないでください」


 廊下で二人が会話をしている中、教室の中ではというと。


「……誰?」

「なんでアオイちゃん、後輩くんと仲良さげに話してるのっ?」

「俺らが話しかけても、葵ぼーっとしてたのにっ」

「……あれって確か……」

「つばさクン、知ってるの?」


 ツバサが何か知っているようで、みんなの視線を集めていた。


「……確か、Sクラスの……」


 ツバサは、記憶を手繰り寄せるように眉間に力を入れている。


「……そうだ。名前は月雪蓮。『月雪グループ』の御曹司よ」

「え? そんな人が、なんであっちゃんと仲良いの?」

「ま、まあ? アオイちゃん、敬語で話してるみたいだしー?」

「そうだ。そんなに仲良くはない……はずだっ」

「いや、だから二人とも落ち着いてよお」


 そうこうしているうちに、葵が笑顔で教室に戻ってきた。


「え? どうしたんだみんな」


 苛立ちを隠せない男たちに「ま、そうなるよね~」とキサは諦めている。


「葵、今の奴とはどういう仲なんだ」

「アオイちゃん! いつの間にそんなに仲良くなってたのっ?!」

「アンタと今の彼って、どういう関係なのよ」

「あおいチャン。おれも教えて欲しい~……」

「え。なんでそんなに食いつくの?」

「まあまあ、あっちゃん。何があったかは知らないけど、話してやってくれよ。そして早く生徒会室に行こう」


 それもそうだと思って、葵は今朝のことを話すことに。