「むかしむかし、ある咲きたての花から、小さな芽が、出ました」 葵が話し出した言葉を、カエデは静かに聞いている。 「その芽はとっても不気味な芽で、たっくさんの水を、栄養を、日の光を吸収していきます」 花壇のところに腰掛けた葵は、ちょんちょんとカエデに自分の隣へ座るよう促す。 「これはひとつのお花のお話です。ある花たちにとってはとっても幸せで、ある花たちにとってはとっても不幸せで。その花にとっては、……とっても残酷な」 ゆっくりと、葵は昔話を子どもに語るように話し出した。