「どうして君に今のことを隠してたのかっていうと……」
「オレが、弱かったからだ」
膝の上で拳をぎゅっと握り締めている彼の手を、包み込むように葵はそっと触れる。
「でも今は強くなった。きっとあの頃の君に言ったら、犯人を捕まえようと危険なことをしたかもしれない。もしかしたら、自分たちの目の届くところからいなくなってしまうかもしれない。君がまた、寂しい気持ちに押し潰されそうになって、暴走するかもしれない。そして、自分を責めてしまうかもしれない。……皆さんは、そう思ってた」
「アオイ……」
「そんなチカくんを、君のことが大好きな皆さんは見たくなかったんだ。でも、チカくんはもう大丈夫でしょう? 犯人を捕まえようなんて危ないことはしないし、みんなのそばにいるでしょう? もう寂しい時は人に話せるし、自分を押し殺したりなんかしない。……だから」
――自分が悪いなんて、そんなこと思うんじゃないっ!
「いいかチカくん。君のどこが悪かった? 悪いのは犯人でしょう? チカくんは被害者じゃないか。大好きだった人たちから引き離されて、大好きな人を失って! ……チカくんが悪いなんて、ひとつもないっ!」
「……ん。そう、だな」
「全部悪いのは犯人だチカくん。その人ももう捕まった。恨んだって何一つ解決しない。だから……復讐なんて、考えないで。そうしてつらくなるのは、チカくんのここだけだよ」
そうして葵は、チカゼの胸に……心にそっと触れる。
「……大丈夫だアオイ。オレはちゃんと、わかってる」
自分の胸に触れる葵の手をそっと握り締め、チカゼはにかっと笑った。
「そんなこと、もう考えねえよ。オレはこれから、オレのことを大事に育ててくれたばばあと、見ていてくれたここにいる人たちに、少しでも恩が返せるように生きていく。……もちろん、お前もな」
チカゼがぽんと、葵の頭に手を乗せて笑う。
それにつられて、葵も笑った。



