すべてはあの花のために④


「おばあさま。チカゼくん、とっても大きくなりましたよ」

「……ん?」

「そうやな。私もそう思うわ」


 ほんの少し、小さく笑う彼女の顔に影が差す。


「おばあさま、もう。チカゼくんは大きくなりました」

「……」

「もう、とっても強くなったんですよ」

「……そうやな」

「だってちゃんと、寂しいって気持ちと向き合えたんですから」

「……!」


 葵はにっこりと笑う。


「おばあさま。もうチカゼくんは大きくなりました。強くてやさしい男の子ですよ。もちろん心も」

「そうかいな」


 どういうことかわからないチカゼとキサ、そしてキクは首を傾げているだけ。


「おばあさま。サツキさんアカリさん。それから……カエデさん。きっともう、彼は受け止められます。だから、教えてあげても大丈夫なんじゃないかと、わたしは思うんですけど」


 大人組は、驚愕しているようだった。『なんで、知っているのか』と。


 きっと彼らには、伝えていると思った。
 今はもう話せない彼らが、遺した言葉を。


「はあ。相変わらず流石だな、お嬢ちゃん」

「え。……か、カエデさんって、そんな話し方なんすか」

「おうよ、こっちが本物だ。……ったくよお、お嬢ちゃんには何でもお見通しで怖いったらありゃしねえ」

「いえいえ。ただ、そうなんじゃないかと思っただけなので」

「にしても、俺らは楓くんのことは何も言ってなかったのにね」

「そうそう! どうしてわかっちゃったの葵ちゃん!」

「……あおい、やて?」


 チカゼの祖母は何かを呟いて首を傾げていたけれど、考え込んでいたので葵はアカリとサツキ、そしてカエデの方へと視線を向けた。


「まあ、お得意の予想でって感じです。カエデさんがここにおられることは全然知りませんでしたが、ちょっと知り合いからそれを聞いたので、何となく話が繋がった感じですけど」


 微笑む葵に、みんなはお手上げ状態。


「どうでしょう。お話するようでしたら、わたしは席を外しますよ」

「いてもいいんじゃないかな。葵ちゃんがそう言ってくれたから、俺らは話す気になったし」

「そうね! 葵ちゃんにも。それから紀紗と菊ちゃんも、話を聞いていきなさい」

「え?」

「……よく、わかんねえけど」


 二人は顔を見合わせながら、首を傾げつつも同意を示すように頷いている。


「俺も、お嬢ちゃんにも聞いておいてもらっていいと思いますよ。フジカさん」


 カエデの言葉に、みんなの視線が一斉に彼女へと集まった。