そのあとは、みんなで晩ご飯の準備。わいわいがやがやと、大騒ぎしながら酢飯や野菜、巻く具材などの準備をする。すると朝の出来事などなかったかのように、みんなとの間にも、もちろんヒエンとも、わだかまりなんかなくなっていた。
葵があんなことを言ったから、オウリは調子に乗って葵の方を向いて巻き寿司を両手で持ってぱくり。そうしたら葵がオオカミになりかけて、逆にぱくっと食べられそうになったのを、みんなが必死に抑えてくれた。
そうしたら葵が本気で暴れ出して、「やっぱりわたしが引き取るうー!」って言い出した時には、流石にヒエンにガッチリ羽交い締めされて身動きが取れなくなって項垂れていた。
「(……みんな、多分気にはなっているんだろうけど……)」
元気な姿を見られただけで十分と、この場の雰囲気を楽しんでいた。
……でもそんなのは、一番オウリ自身が許せなかった。
ご飯を食べ終え、みんなで片付けをした後、オウリは葵の服をツンツン引っ張る。
「ん? どうしたんだいオウリくん」
葵はヒエンと一緒に洗い物をしていた。
みんなは机を拭いたり、机の周りを片付けてくれている。
オウリは、もう一度葵の服を引っ張った。
「お嬢ちゃん、ここはいいから、オウの話聞いてきてやってくれ」
見上げたヒエンは、まるで本当の父親みたいに、やさしく笑っていた。



