すべてはあの花のために④


 でももう、迎えには来なかった。
 オレが小3の時、親父と母ちゃんの訃報を聞いた。何かの間違いだって。そう思いたかった。


 親父たちは、交通事故で死んだんだ。
 通帳も。全財産持って。大きな荷物も抱えてさ。……まるで夜逃げみたいだったって。

 オレはちゃんと、待ってたのに。
 ばばあが、いい子で待ってろって言ってたから。
 ちゃんと、誰に何を言われたって。待ってたのに。


 葬式には、みんな来てくれた。
 その時はまだシントさんもいた。執事のカエデさんも来てた。トーマもいた。みんな、泣きながら手を合わせてた。


 でもそんな奴らばっかじゃなかった。
 まるで夜逃げをするような荷物で、姿を眩ませるようなことをして。急に会社が倒産したのには、何かあるんじゃないかとか。子どもを見捨ててまで、自分たちは助かろうとした馬鹿な親だとかなんとかな。

 オレは、我慢した。
 オレの親父たちは、立派な人だ。やさしくて、格好いいんだって。そう、言い聞かせてた。



 でも、我慢の限界だった。
 小5に上がったオレは、暴走したんだ。

 ずっと、陰口みたいなのを言われ続けてたんだ。
 あいつには親が二人ともいないんだとか、親はあいつを見捨てたんだとか、あいつに近づいたら会社が倒産するだとか。


 ずっとずっと、我慢してきた。
 でも。親父のことを。母ちゃんのことを。終いにはばばあのことを悪く言われて、今までの分全部、爆発した。


 そんなこと言ってきやがった奴らを、ボコボコに殴った。蹴った。
 女に手は出すなって、親父にも母ちゃんにもばばあにも言われてきたから、なんかそこら辺のものを、当てないようにぶん投げて。


 押さえ込んできた奴らもぶっ飛ばした。気が済むまで暴れるつもりだった。
 もう、止まんなかった。止めたくても、止めらんなかったんだ。

 小5でどんだけ暴れんだよって、思うだろ? オレも思うわ。今思えばの話だけど。
 まあ暴れたのが学校だったから、先生とか他のクラスの生徒が野次馬で見に来てた。先生のことも、ぶっ飛ばしてたなあ。

 ……そこでオレのことを止めてくれたのが、アキだったんだ。


 何も、してこなかったよ。
 ただ、暴れるオレを抑えた。オレに腕を回して。暴れるオレを抑えてただけ。

 耳元で、言うんだ。
「大丈夫だ」ってさ。ずっと、そう言ってさ。

 きっとだけど、アキも母ちゃんいなくなっちまったし、おじさんだっておかしくなっちまってるし。シントさんだって消えちまってたから、オレの気持ちをわかってくれたんだと思うんだ。


 そう言われ続けて、オレがしたことを後悔した。
 オレと友達だった奴らも、クラスの奴らも、先生だって。オレのこと、怯えて見てたんだ。

 あーあ。やっちまったって。そう、思った。