すべてはあの花のために④


 キサの父ちゃんの話で、オレの親父の話がちょっと出てきてたの覚えてるか?

 親父は心底母ちゃんに惚れてた。子どものオレにも、母ちゃんの自慢いっつもしてさ。
 親父は母ちゃんにべた惚れで、母ちゃんはオレにべったりで。結構、毎日楽しかったよ。


 オレの親父は、ある会社の社長をしてた。規模で言ったらトップクラス。当時は皇よりもデカかったはずだ。

 でも、急に景気が悪化して、会社が急に傾きだした。

 リストラしないとやっていけない状況に陥った親父は、次の働き口の紹介をしながら、一人一人に頭を下げて回った。
 でも社員は、切られても文句の一つ言わなかった。親父を信頼してくれていたから。

 ……でも、それもすぐ駄目になった。


 会社は一気に倒産。会社が潰れても親父は社員たちを未来を守るため、いろんな会社に頭を下げて回りながら、次の働き口を必死に探してやってた。

 親父だけだったら大変だからって、母ちゃんも手伝ってたよ。母ちゃんは、親父の秘書みたいなもんだったから。所謂敏腕母ちゃんだった。


 でも路頭に迷う社員の数が途轍もなくて、二人は自分たちを差し置いてでも、寝ずにこれからのことを考え続けてた。



 そんな状況だったから、一旦オレは、母ちゃんの母ちゃんに預けられた。ばばあって言ったらお前怒るんだろうけど……や、しょうがねえだろ。そう言ってんだから。

 ばばあんとこでオレは暮らしてた。二人でな。

 親父のお人好しな仕事探しは、いつ終わるんだろう。母ちゃんの時々くっそ不味い飯は、いつ食えるんだろうって。オレはずっと、待ってたんだ。
 二人が、オレのこと迎えに来てくれること。……ずっと、待ってたんだよ。



 でも、ずっと待ったって、二人は迎えにきてくれなかった。

 会社が倒産したのはオレが年長の時の冬。
 年が明けて、オレが6つになって、何とか桜に入れてくれた親父たちは、仕事探しに専念しようとオレをばばあんとこに預けた。
 ……ああそうだな。キサが、本当の子じゃないって教えてくれた年、だったかもな。


 小学生になって一年。また一年って。オレはばばあのとこでずっと待ってた。
 ばばあに聞いたら、取り敢えずパートとかしながら、まだ働けてない社員のために頑張ってんだって。

 子供だったオレは、そんな状況でも迎えに来て欲しかった。でも人のためを思って、そんなことができる親父と母ちゃんはすごいんだって、そう言い聞かせてた。
 ある程度落ち着いたらきっと迎えに来てくれるから、それまではいい子で待ってろって、ばばあが言うから。オレは、ちゃんと待ってた。

 ……誰に、何を言われたって。