「それよりチカ、こいつに渡すものあるんじゃないの」
「そうだった! 忘れてた!」
チカゼが慌てて鞄の中を探り始める。目当てのものはすぐに見つかったのか、それを取り出そうとしたところで何故か手を止めて、チカゼはじっと葵へと視線を向けた。
「……おい」
「? はい」
「お、……オレらは。お前の……っ、なんだ!」
「え? お友達。仲間だよ?」
「な、ならなんでっ、オレらに内緒でどっか行くんだよっ!」
「チカくん……」
みんなも同じことを思っているのか、不安そうな視線が集まってくる。
「……みんなに、言わなくてごめんね」
「――っ。ち、がう。……オレは。オレらはっ。謝って欲しいんじゃ」
「うん。ちゃんとわかってる。でも、友達って言っても、近づく限度があるでしょう?」
「へっ? ……おま。何、言って……」
「え? お、おかしなこといったかな。ヒナタくんは、そう思うよね?」
「……そうだね」
同意するヒナタに、みんなが「おい」とか「どういうことだ」とか食ってかかるが。
「だってさあー。変態を直しに修行行くなんて恥ずかしいこと、友達にだって言えないよお……」
そう言ったら案の定、みんなは目を丸くした。
「お寺に行ったらさ、どうやらわたし、変態だけじゃなくってどうやらドMにも目覚めてしまってたみたいで。その抑え方を修行してたんだけど……」
「あ、あっちゃん? 必殺技を編み出すっていうのは……」
「ああ。それはねえ、自分の暴走を止める抑止術を学んだんだ。いや~でもやっぱり上手くいかないね! オウリくん見たら今でも飛びつきたいもん。じゅるじゅる」
みんなは、涎を物凄い勢いで啜る葵の視界から、全力でオウリを隠した。
そしてとことん、冷たい視線を向けられた。一方ではかわいそうな目でも。
「お前。それはないわ」
「ええ。それはないわね」
「アオイちゃん、それはやめようよ」
「あおいチャン。修行に行くほどなの……?」
「…………(震)」
「葵。それは抑えられるようになろう」
「あっちゃん。あたしも手伝うわ」
「流石に下僕にしとくのもちょっと気持ちが悪いんだけど」
「(がーん……!)」
強烈な一言を浴びせられてしまって、一気にHPはゼロ。
いつの間にか葵は、みんなの中で大変劣悪な下等生物になっていた。



