すべてはあの花のために④


「それよりチカ、こいつに渡すものあるんじゃないの」

「そうだった! 忘れてた!」


 チカゼが慌てて鞄の中を探り始める。目当てのものはすぐに見つかったのか、それを取り出そうとしたところで何故か手を止めて、チカゼはじっと葵へと視線を向けた。


「……おい」

「? はい」

「お、……オレらは。お前の……っ、なんだ!」

「え? お友達。仲間だよ?」

「な、ならなんでっ、オレらに内緒でどっか行くんだよっ!」

「チカくん……」


 みんなも同じことを思っているのか、不安そうな視線が集まってくる。


「……みんなに、言わなくてごめんね」

「――っ。ち、がう。……オレは。オレらはっ。謝って欲しいんじゃ」

「うん。ちゃんとわかってる。でも、友達って言っても、近づく限度があるでしょう?」

「へっ? ……おま。何、言って……」

「え? お、おかしなこといったかな。ヒナタくんは、そう思うよね?」

「……そうだね」


 同意するヒナタに、みんなが「おい」とか「どういうことだ」とか食ってかかるが。


「だってさあー。変態を直しに修行行くなんて恥ずかしいこと、友達にだって言えないよお……」


 そう言ったら案の定、みんなは目を丸くした。


「お寺に行ったらさ、どうやらわたし、変態だけじゃなくってどうやらドMにも目覚めてしまってたみたいで。その抑え方を修行してたんだけど……」

「あ、あっちゃん? 必殺技を編み出すっていうのは……」

「ああ。それはねえ、自分の暴走を止める抑止術を学んだんだ。いや~でもやっぱり上手くいかないね! オウリくん見たら今でも飛びつきたいもん。じゅるじゅる」


 みんなは、涎を物凄い勢いで啜る葵の視界から、全力でオウリを隠した。
 そしてとことん、冷たい視線を向けられた。一方ではかわいそうな目でも。


「お前。それはないわ」

「ええ。それはないわね」

「アオイちゃん、それはやめようよ」

「あおいチャン。修行に行くほどなの……?」

「…………(震)」

「葵。それは抑えられるようになろう」

「あっちゃん。あたしも手伝うわ」

「流石に下僕にしとくのもちょっと気持ちが悪いんだけど」

「(がーん……!)」


 強烈な一言を浴びせられてしまって、一気にHPはゼロ。
 いつの間にか葵は、みんなの中で大変劣悪な下等生物になっていた。