「葵ちゃん……」
「トーマさん……」
そしてあっという間に大阪に着き、彼女と見つめ合う。
「どうせなら大阪も観光していこうぜ!」
「そうだね。折角だし」
「お好み~」
「たこ焼きー」
「♪~♡」
「紀紗! 激安の化粧品店があるらしいわよ!」
「なんだと翼! それは行かねば!」
「葵。今から俺ともデートしよう」
「「…………はあ」」
そして同時にため息をついた。相変わらず、みんながマイペースで安心したけど。
「でも、こんなのも楽しいですね。無計画で無鉄砲で。……行き当たりばったりって、わたしには結構抵抗があるんですけど」
「……葵ちゃん、まだ時間は大丈夫なんだよね」
「え? あ、はい」
了承を得てから葵の手を取り、思い切り駆け出す。
「どうせならギリギリまでいさせて! 明日学校大変だと思うけど!」
「――ははっ。……はいっ。よろこんで!」
そのあとは、二人の後を鬼の形相で付いてくるみんなとともに、最終の新幹線まで大阪観光を楽しんだ。
最初から最後まで手を繋いだまま大阪観光を楽しんで、改札口まで見送り。
「……それじゃあね、葵ちゃん」
名残惜しく思いながら手を離す。彼女の熱を冷たくなった風がさらっていこうとして、慌てて閉じ込めようと自分の手を握ろうとした。
「……えっと」
「あっ。あおい、ちゃん……?」
けれど何故か、彼女の手が戻ってきて。ついでに可愛く抱きつかれて。
「えへへ。トーマさん! また会いましょうね!」
「……! ……うんっ。またね、葵ちゃん」
最後はみんなで手を振り合った。
みんなの姿が見えなくなるまで、大きく手を振り続けた。
「……またね、か。はは。次の約束ができるって、すごいことだったんだ」
涙の膜ができた瞳から、堪えきれなかった涙が、一筋の零れ落ちる。
「……絶対にまた、会いに行くよ」
涙を拭いて、改札を背にする。
体を動かし、トーマは力強く一歩を踏み締めた。



