「あーおいちゃん」
「はい?」
――パシャッ! まずは一枚。
「すっかり撮るの忘れてた。よかった撮れて」
「トーマさんまた不意打ち! ちゃんと撮るなら撮るって言ってください!」
「……だったら、一緒に撮ろう?」
口を尖らせて言う葵が可愛くって、つい葵の腰を引き寄せる。
「葵ちゃん、顔硬っ」
「す、すみません」
カメラを向けると顔が強張る葵はまだ、きっと怖いのだろう。
「……あ。あっちにワラビーがいる」
「ワラビー!?」
パシャリ。もう一枚。
「あ」
「ははっ。葵ちゃん、絶対不意打ちで撮った方がいいよ。断然可愛いから」
見せてあげた画面の中には、満面の笑みの葵。
「……嫌、だった?」
一瞬目を見開いて固まった彼女だったが、ふるふると首を振って笑ってくれた。
「いいえ。……すっごく楽しいし、嬉しいですっ」
「――――」
至近距離の笑顔に、勝手に体が動いてしまいそうになったけれど、周りからの殺気でそんな気もあっという間に失せた。



