すべてはあの花のために④


「あーおいちゃん」

「はい?」


 ――パシャッ! まずは一枚。


「すっかり撮るの忘れてた。よかった撮れて」

「トーマさんまた不意打ち! ちゃんと撮るなら撮るって言ってください!」

「……だったら、一緒に撮ろう?」


 口を尖らせて言う葵が可愛くって、つい葵の腰を引き寄せる。


「葵ちゃん、顔硬っ」

「す、すみません」


 カメラを向けると顔が強張る葵はまだ、きっと怖いのだろう。


「……あ。あっちにワラビーがいる」

「ワラビー!?」


 パシャリ。もう一枚。


「あ」

「ははっ。葵ちゃん、絶対不意打ちで撮った方がいいよ。断然可愛いから」


 見せてあげた画面の中には、満面の笑みの葵。


「……嫌、だった?」


 一瞬目を見開いて固まった彼女だったが、ふるふると首を振って笑ってくれた。


「いいえ。……すっごく楽しいし、嬉しいですっ」

「――――」


 至近距離の笑顔に、勝手に体が動いてしまいそうになったけれど、周りからの殺気でそんな気もあっという間に失せた。