「あっち行ってみよー!」
「ちょ。おいキサ! 待てって!」
「はあ。めんどくさっ」
「あ! お嬢さーん。今日はどちらからいらしたんですか~?」
「翼、あれお前にそっくり」
「え? ……マンドリル。はあん!? アキ! どういうことよそれ!」
「お、おうり? 何してるの?」
「…………(※ウサギさんとにらめっこ)」
「(いやいやいや。お前ら隠れる気全然ねえのかよ……!)」
思う存分満喫してやがった。
心配して損したと思っていたら、不意に彼女が立ち止まっているのに気づく。
視線を上げると、葵はあいつらの方を見ていた。
「あ、葵ちゃん。あいつらは……」
「ふふっ。さあトーマさん! 次はどこへ行きましょうか~」
「あ! ウサギさんもいるんですね! フクロウさんもいる~」と、はしゃいでいる彼女を見て、全てを納得した。きっと、ずっと前から気づいていたのだろうと。
「……話さなくていいの?」
「何言ってるんですか。わたしは今、トーマさんとお出かけに来てるんですから、めいっぱい楽しみましょうよ」
折角だったら話させてやりたいって思ったけど、予想以上に力強く腕を引っ張られる。
そうされてようやく気がついた。彼らにももちろん、自分にも気を遣ってくれていることに。
「(まったくもう。人の気持ちには敏感なくせに)」
葵のことを、今までよりももっと、愛おしく感じた。
「トーマさん! ヘビ触れるらしいですよヘビ! 行きましょう!」
「はーい」
「トーマさんトーマさん! こっちはポニーちゃんと触れ合えるって!」
「ほーい」
「トーマさんトーマさんあっちには――」
「あ~~れ~~」
結局葵に思う存分振り回されたトーマだったが、当初の目的を思い出し、首に掛けていた一眼レフを構える。



