すべてはあの花のために④


「トーマさんは、昨日一昨日は何をされてたんですか?」

「……めっちゃ大変だった」

「え」


 そのあと近くの店でランチをしていたのだが。眉を寄せ頬杖をついたあと、窓の外を見る彼の姿は、そのまま灰になって消えそうだった。


「ど、どうしてそんなお疲れに?」

「昨日は、父さん母さんと出かけたんだけどさ」

「……それで?」

「恋愛成就のパワースポットを連れ回された」


 トーマは盛大にため息をついていた。


「パワースポット行ったり、食べさせられたり、……いっぱい買い与えられた」

「……そ、それはそれは」


 父母よ、どれだけ振り回したんですか。


「終いには、『絶対ものにして来い』『あそこを直せここを直せ』『かっこいい』『頭がいい』『さすがはウチの子』言いたい放題」

「いやいや後半めっちゃ褒めてるー……」


 とんだ親バカだ。


「(……でも、本当に愛おしくて仕方がないんだろうな)」


 だって、話しているトーマの顔には、疲れていても『楽しかった』って書いてあるもの。


「よかったです。楽しかったみたいで」

「……ん。そうだね。想像以上に楽しかった」


 トーマの子供っぽい笑顔が見られて、その可愛さについドキドキしてしまったのだった。