最初の目的地は海。海中観光船で、海の中を散歩するという。
「葵ちゃんは、海が嫌い?」
「えっ? どうしてそう思ったんですか?」
海水浴は、普通に楽しんでたはずだけれど。
「アキに落とされちゃったから、あんまりいい思い出にはならなかったかなって」
「そんなこともありましたね。でも、別に見るのは嫌いじゃないですよ?」
「じゃあ泳ぐのは?」
「……泳いだことはないので、わからないです」
「だから落とされた時溺れたの」
「え。と、トーマさん?」
電車の中、二人はぴたりとくっついて座っていた。先程までの楽しそうな雰囲気が一変、なんだかつらそうな表情のトーマ。
「溺れた時、全然抵抗してなかったよね。これが当たり前だって。受け入れてる感じだった」
「……そうですね。こんな風に枯れていくのかなって。遅かれ早かれ……って。思っていました」
「でも助けてもらってよかったって、今は本当にそう思ってますよ」と、微笑む葵が話を終えたので、「……そっか」と。トーマはそれ以上のことは聞いてこなかった。
「すっごい……! 綺麗ですね!」
「ここ最近いい天気だったから綺麗に見られるとは思ってたけど、まさかこんなに綺麗だとは思わなかった」
それから早速船に乗り込み、エメラルドグリーンの澄んだ海の中を堪能した。船底の窓からは、綺麗な色をした熱帯魚など、いろんな魚や珊瑚も見ることができた。
「トーマさんも来られたのは初めてなんですか?」
「そうだね。俺彼女とかいなかったし」
「お友だちとかは?」
「遊びに誘われることはあるけれど、男だけでこんなところにいても悲しくなるだけじゃない?」
「第一俺を誘ったら、女が取られるからって。あんまりそういうのにも誘ってもらわないしね」とぼやくトーマの横顔を見上げながら尋ねてみる。「寂しいですか?」と。
「え? どうだろ。それが当たり前だったし」
「今は楽しいですか?」
「……うん。これ以上ないほど楽しい」
照れ笑いを浮かべる彼に葵もにこっと笑い返す。
「わたしも今、トーマさんといられてとっても楽しいです。だから、お友だちもきっと楽しいはずですよっ」
そう教えてあげると、「そっか。それはよかった」と、トーマも嬉しそうに笑ってくれた。



