すべてはあの花のために④


「ご無沙汰してます。西園寺さん」

「杜真くんも、元気そうで何よりだ」

「結婚の挨拶に伺った以来ね」

「ほお! この子が例の子かいの!」


 さらっと葵の荷物を持ちながら、トーマは苦笑い。


「ほんと、あの時は驚きましたよ。俺らの式してすぐじゃなかったですか?」

「いやーなんか、場の雰囲気にやられたというか」

「なんか昔の気持ちが込み上げて来ちゃったというか~?」

「何はともあれじゃ! いやーめでたいっ!」


 葵は、トーマにこそっと耳打ちして尋ねた。どうして知っていたのに教えてくれなかったのかと。思わず拗ねた口調になると、トーマはどこか嬉しそうに笑って「葵ちゃんには、直接言いたいって聞いてたから」と教えてくれた。

 それがくすぐったくて、思わず涙ぐみそうになる葵の背中を、トーマがぽんと撫でてくれた。


「……っ。短い間でしたが、とってもお世話になりました!」


 葵の満面の笑顔に、「またおいで」と。三人はあたたかく見送ってくれた。