「ご無沙汰してます。西園寺さん」
「杜真くんも、元気そうで何よりだ」
「結婚の挨拶に伺った以来ね」
「ほお! この子が例の子かいの!」
さらっと葵の荷物を持ちながら、トーマは苦笑い。
「ほんと、あの時は驚きましたよ。俺らの式してすぐじゃなかったですか?」
「いやーなんか、場の雰囲気にやられたというか」
「なんか昔の気持ちが込み上げて来ちゃったというか~?」
「何はともあれじゃ! いやーめでたいっ!」
葵は、トーマにこそっと耳打ちして尋ねた。どうして知っていたのに教えてくれなかったのかと。思わず拗ねた口調になると、トーマはどこか嬉しそうに笑って「葵ちゃんには、直接言いたいって聞いてたから」と教えてくれた。
それがくすぐったくて、思わず涙ぐみそうになる葵の背中を、トーマがぽんと撫でてくれた。
「……っ。短い間でしたが、とってもお世話になりました!」
葵の満面の笑顔に、「またおいで」と。三人はあたたかく見送ってくれた。



