引き取ってからは、俺の伝で入園はさせた。伝って言っても、海棠が関係してるところだ。
俺が引き取った時にはもう、あいつは喋りもしなかった。笑顔なんか、見せてもくれなかった。
最初の方は病院で見てもらっていたが、こいつも精神的なもんだ。
オウの場合は暴れるなんてことはなかったから、薬を飲ませて落ち着かせて、普通に生活できるようになってから通わせた。
それでも、このままじゃいけねえと思った俺は、偶然二宮道場の前を通った。これしかねえと思って、オウを担いで無理矢理入れた。
最初は嫌がってたな。顔には出てなくても、態度には出てたから。
それでも同年代ぐらいの子がいたから、それなりに楽しくやってたみたいだ。
小学校に上がったら、友達がたくさんできてたな。
それでもなかなか笑うことはできなかったけど、その友達にいろいろ教えてもらったみたいでな。
それからは、本当によく笑うようになった。
お嬢ちゃんに会ってからも、あいつはすげえ嬉しそうだったぞ。
なんか変な防犯ブザー? 渡されて、気持ち悪くて投げ捨てたっつってたけど……え。そんなに落ち込むんかい。いやいや、防犯ブザーが悪かったんじゃないから多分。
……見舞いには行ってた。俺はな。後はミノルの両親もか。
オウは、行きたくても行けなかったんだ。お嬢ちゃんも見ただろう?
母親の方が、どうしてかオウに執着してるんだ。それを見てオウの方も怯えてる。
でも、それも変えなきゃいけないんだよな。
いつまでも逃げてたら駄目だ。俺も、オウも、母親も。
そう考えさせてくれたのは、お嬢ちゃんのおかげだ。改めて、礼を言うよ。
「と、まあこんな感じか?」
葵は何も言わなかった。
いいや、言えなかったのかもしれない。
ただ話を聞いて、 ただずっと目を瞑っていた。
「どうした。話を聞くのが怖くなったか」
犯罪者でなくても。騙されてたとしても。そんな奴の子と聞くだけで差別する奴は、この世に山ほどいる。
「……いいえ。ただ、今まで苦しかっただろうなって」
葵は、それ以外は言わなかった。
でも彼女の目は、何かを決心したような力強い瞳をしていた。



