すべてはあの花のために④


 今夜もまた昨日の場所まで向かっていると、その最中。夜なのに綺麗に咲く花を見つけた。


「……あなたは、お日様がなくても花が開くのね」


 羨望の瞳で見つめながら、その花をつんつんと突く。


「……わたしも、頑張ってお花を咲かせる。絶対に」


 そうして立ち上がり、一歩。また一歩と登っていく。やっぱり今日も、まわりには人はいなかった。

 昨日は上ばかり見ていたからと、眼下に広がる綺麗な景色を眺めた。


「……ねえ、あなたはしってる? こんな素敵な物語。ひとつの花のお話を」


 ――そうだ。歌を歌おう。


「……花はどんどん黒くなる。汚くなる。小さくなって、最後は笑って消えるのよ? だって花はたくさんの花が幸せで、とっても。うれ、しいの。だから……っ」


 また、気づかないうちに涙を流していた。


「……ふう。絶対、歌詞。変えてやる……」


 そうして、もうひとつの歌も口ずさむ。


「あなたは、知っていますか? ここに咲いている、花の名前を。たくさんの花に囲まれた、その花を。好きになったらそばにいて、恋しくなったら触れてみて。寂しくなったらキスをして、愛しくなったら名を……」


 そこで、言葉に詰まった。


「……名をっ。よ、んで……」


 再びぽろぽろと落ちてくる。


「……なまえを、よんでくれないと。わたしは……っ」


 葵は手を伸ばす。
 高く高く。遠い空に浮かぶ月へ。


「……今日から笑顔でいます。みんながいれば、わたしは笑顔でいられる」


 葵は両手でそれをすくって、自分の胸に、持ってくる。


「……絶対にわたしは、幸せになります。必ずです」


 月へ誓って戻ってくると、やっぱり三人が深刻そうに話をしていたので、葵は用事を済ませて眠りについた。