今夜もまた昨日の場所まで向かっていると、その最中。夜なのに綺麗に咲く花を見つけた。
「……あなたは、お日様がなくても花が開くのね」
羨望の瞳で見つめながら、その花をつんつんと突く。
「……わたしも、頑張ってお花を咲かせる。絶対に」
そうして立ち上がり、一歩。また一歩と登っていく。やっぱり今日も、まわりには人はいなかった。
昨日は上ばかり見ていたからと、眼下に広がる綺麗な景色を眺めた。
「……ねえ、あなたはしってる? こんな素敵な物語。ひとつの花のお話を」
――そうだ。歌を歌おう。
「……花はどんどん黒くなる。汚くなる。小さくなって、最後は笑って消えるのよ? だって花はたくさんの花が幸せで、とっても。うれ、しいの。だから……っ」
また、気づかないうちに涙を流していた。
「……ふう。絶対、歌詞。変えてやる……」
そうして、もうひとつの歌も口ずさむ。
「あなたは、知っていますか? ここに咲いている、花の名前を。たくさんの花に囲まれた、その花を。好きになったらそばにいて、恋しくなったら触れてみて。寂しくなったらキスをして、愛しくなったら名を……」
そこで、言葉に詰まった。
「……名をっ。よ、んで……」
再びぽろぽろと落ちてくる。
「……なまえを、よんでくれないと。わたしは……っ」
葵は手を伸ばす。
高く高く。遠い空に浮かぶ月へ。
「……今日から笑顔でいます。みんながいれば、わたしは笑顔でいられる」
葵は両手でそれをすくって、自分の胸に、持ってくる。
「……絶対にわたしは、幸せになります。必ずです」
月へ誓って戻ってくると、やっぱり三人が深刻そうに話をしていたので、葵は用事を済ませて眠りについた。



