すべてはあの花のために④


 それからいつしかオウは、声が出なくなってた。

 まだ兄貴が死んだ時は、出ていたはずだ。表情だって、まだ動いてた。
 でも、あんまりもう動かなかったかも。多分、どんな顔をして母親と顔を合わせたらいいのか、わからなかったんだろう。


 俺が本名を名前を隠してるのは、一応そんなことがあったから。
 別に俺はそんなこと気にはしなかったけどな。大した被害もなかったし。でも家に、気にする奴がいるからな。

 俺の家が少し遠いのは知ってるか?
 なるべく氷川から遠ざけてやろうと思ったんだ。氷川は、桜よりは百合寄りだから。あいつの母親は入院してるのもそのせい。


 桜方面に入学させたのは、海棠が手を貸してくれたから。
 ミノルの奴も、事情がわからない割に必死に当時の理事長を説得したらしい。今あいつが理事をやってるのは、オウのためでもあるんだろう。


 彼女が入院することになり、俺があいつを引き取った。
 精神的で重症。だから時間がかかるって主治医は言ってた。まあ本当は、時間なんかが解決できるような病気じゃないってことはわかってんだ。

 お嬢ちゃんの言葉を借りるなら、母親の方も強くならなきゃいけねえんだよ。