「(きっと、不明瞭だったトーマさんの、未来の助けになってくれるように。これからのことを真剣に考えてくれるようにって思いがこもってるんだろうな)」


 サファイアには、冷静な判断を促し、チャンスや運命的な出会いを掴めるようになる効果もあるという。この家族には、本当に流石としか言い様がなかった。


「(そういえばお母さん、なかなか帰ってこないけど、まだラブラブ中なのかな?)」


 そんなことを考えていたせいで、トーマの呼ぶ声に一瞬反応が遅れる。


「何ですか?」

「に、……日曜日。帰るまで俺と一緒にいて欲しいんだけど、ダメかな」

「いいですよ?」

「ええ?! い、いいの?」


 すごく驚かれた。断るわけないのに。


「だって、今回はトーマさんに会うために来たんですもん。修行が終わったら、帰るまで遊びましょう!」

「……ありがとう。葵ちゃん」


 しかし、例のアプリのせいで連絡を取り合うことは難しいため、最終日にトーマが寺まで迎えに来てくれることに。自分の都合に振り回して申し訳なく思ったけれど、「俺が早く葵ちゃんに会いたいだけだから、寧ろ迎えに行かせてくれてありがとう」と感謝されてしまったので、心からお言葉に甘えさせてもらうことにした。

 予定が立ったところで流石に突撃修行は迷惑だろうからと、片っ端から寺に連絡を入れようとすると、ラブラブから帰ってきたアヤメからなんと、すでに連絡は入れておいたと報告が。


「知り合いのお寺さんにご連絡したら二つ返事で。寧ろ是非にと言ってくれていたわ」

「い、いきなりだったのに……なんとお心の広い方なんでしょう」

「ふふ。そうね? お寺さんの方も、楽しみにしていますって言ってたわ」

「ありがとうございます、お母さん。何から何まで」

「いいのよ。娘のためだもの」


「だから何なのその設定」とトーマには突っ込まれたけれど。……やっぱりこの家族、流石としか言い様がなかった。