「トーマ。振られたでしょ」
切ない声の方を振り返る。けれど、すでに興味がなくなったのか、カナデはすぐに部屋から出て行った。
「……何。圭撫も告ったわけ?」
カナデの様子が気になったのか、大半のみんなが戸惑っていた。様子を見るに全員が告白したことを知っているようだけれど。
「……ちょっとオレ、出てくるから」
「オレはじゃあ、トーマの部屋の秘密を暴いてくる」
「じゃああたしは杜真をここで見張っておくねー」
「え? 本気?」
カナデに続いてチカゼと、ヒナタが楽しそうに手を振って部屋から出て行った。それから続いて、「じゃあ俺らも」と、それからキサとトーマ以外が退出。
『俺に、誤った人の動かし方を教えてたこと。そして俺を怒らせたこと。……一生後悔してくださいね』
そしてテレビには、未だ流れる名シーン。
「……杜真はさ、すごく前に進んでるんだね」
誰だよ、さっき人の黒歴史勝手に暴いた奴はと。言いかけてやめた。
「あっちゃんってすごいよね。あたしさ、いろんな人の気持ちも考えも、人生だって変えていってる気がするんだ」
「ん。だな」
DVDを止めるキサの横へ、並んで座る。
「それで? やっぱり振られたの」
「やっぱり?」
「今はちょっと変わったと思うんだけど、あっちゃん結婚するつもりなかったんだって。だから圭撫に告白された時、すごくつらそうだったんだ。好きって気持ちがあまりにも大きくて強くて、……その時のあっちゃんには受け止められなかったんだと思う」
「……でも葵ちゃんが変わったから、わざわざ俺んとこまで来て返事を伝えてくれたんだろうね」
「ちゃんと気持ち、聞けた?」
「……うん。めいっぱい」
「それ聞いて、杜真はどう思った?」
「うん? ……絶対葵ちゃんをものにする?」
「……何それ。全然平気そうでつまんない」
「うん。だから、大丈夫だよ紀紗」



