すべてはあの花のために④


「トーマ。振られたでしょ」


 切ない声の方を振り返る。けれど、すでに興味がなくなったのか、カナデはすぐに部屋から出て行った。


「……何。圭撫も告ったわけ?」


 カナデの様子が気になったのか、大半のみんなが戸惑っていた。様子を見るに全員が告白したことを知っているようだけれど。


「……ちょっとオレ、出てくるから」

「オレはじゃあ、トーマの部屋の秘密を暴いてくる」

「じゃああたしは杜真をここで見張っておくねー」

「え? 本気?」


 カナデに続いてチカゼと、ヒナタが楽しそうに手を振って部屋から出て行った。それから続いて、「じゃあ俺らも」と、それからキサとトーマ以外が退出。


『俺に、誤った人の動かし方を教えてたこと。そして俺を怒らせたこと。……一生後悔してくださいね』


 そしてテレビには、未だ流れる名シーン。


「……杜真はさ、すごく前に進んでるんだね」


 誰だよ、さっき人の黒歴史勝手に暴いた奴はと。言いかけてやめた。


「あっちゃんってすごいよね。あたしさ、いろんな人の気持ちも考えも、人生だって変えていってる気がするんだ」

「ん。だな」


 DVDを止めるキサの横へ、並んで座る。


「それで? やっぱり振られたの」

「やっぱり?」

「今はちょっと変わったと思うんだけど、あっちゃん結婚するつもりなかったんだって。だから圭撫に告白された時、すごくつらそうだったんだ。好きって気持ちがあまりにも大きくて強くて、……その時のあっちゃんには受け止められなかったんだと思う」

「……でも葵ちゃんが変わったから、わざわざ俺んとこまで来て返事を伝えてくれたんだろうね」

「ちゃんと気持ち、聞けた?」

「……うん。めいっぱい」

「それ聞いて、杜真はどう思った?」

「うん? ……絶対葵ちゃんをものにする?」

「……何それ。全然平気そうでつまんない」

「うん。だから、大丈夫だよ紀紗」